帰宅すると「妻と子どもが消えていた」ーーふたたび「家族」となるために

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2015年12月28日 10:02  弁護士ドットコム

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ある日帰宅したら、妻と子どもが家から消えていたーー。


そんなショッキングな経験をした男性から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに悩みが投稿されることは珍しくありません。ある男性は「妻からは『実家に帰る』とメールが届いたきりです。今まで離婚の話が出たことはなく、浮気やDVもありません」。


妻と子を連れ戻し、ふたたび家族で幸せな時間を過ごすための方法はあるのでしょうか。吉田雄大弁護士に詳細な解説をしていただきました。



A. まずは夫婦で話し合い、それでダメなら裁判所の力を借りましょう。


別居が始まるパターンとして、「配偶者が突然、子供を連れて出て行った」というケースは少なくありません。


このような場合、まずは夫婦の間で、「帰ってきてほしい」「子どもに会わせてほしい」と話し合うことが必要です。


しかし、話し合いでは夫婦関係が修復しないこともあるでしょう。「妻がダメなら子どもだけでも連れ戻したい」と思う人もいるかもしれませんが、そのような実力行使は法的に認められません。


では、どのように対処するべきなのか、整理したいと思います。


まず、親には、子どもを育てる権利である「親権」と、子どもと一緒に暮らして世話をする権利である「監護権」があります。離婚をする前であれば、これらの権利は父と母双方にあります。


ご相談者のケースのように、突然子どもが妻に連れて行かれた場合、これらの権利に基づいて、残された夫は地方裁判所に子どもの引き渡しを求める訴えを起こすことができます。


しかし、通常の民事裁判ですから、時間がかかるうえ、家裁調査官などの専門家が関わった形式での、きめ細やかな審理は望めません。


別の方法としては、家庭裁判所に、別居中、子どもを世話する親として自分を指定するよう求める「監護者の指定」と、監護者に指定されたことを前提に「子の引き渡し」を求める審判を申し立てるという手があります。


申し立て後は、家裁調査官により、夫婦それぞれの自宅訪問や、子供が通う幼稚園や学校への事情聴取、子ども本人の発達状況の確認などが行われます。


審判ではそうした調査をもとに、「どちらの親に引き渡せば、より子どもの幸福につながるか」を基準に判断が下されます。


ただし、家裁の考え方として、「生活状況に大きな問題がなければ、現状の監護状態を尊重しよう」という傾向があることは否めません。ご相談者のように、妻が子どもと暮らしている場合、それが「現状」となってしまうのです。


このように、子どもを連れて家を出て行った妻から、夫が子どもを連れ戻すのは、そう簡単なことではありません。


また、配偶者のところに押し掛けて、実力で子どもを奪う行為は、親権者であっても「未成年者略取罪(刑法224条)」が成立しうるとした判例があります。何よりも子ども自身に大きなショックを与えることで、決してなさらないで下さい。




【取材協力弁護士】
吉田 雄大(よしだ・たけひろ)弁護士
2000年弁護士登録、京都弁護士会所属。同弁護士会子どもの権利委員会委員長等を経て、2012年度同会副会長。このほか、日弁連貧困問題対策本部事務局員など。
事務所名:あかね法律事務所
事務所URL:http://www.akanelawoffice.jp/


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