立場逆転も 日本人と中国人の国際結婚の今

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2015年12月29日 17:02  新刊JP

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『ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死』(NHK出版/刊)
ジャパン・マネーを目当てに、アジア諸国の女性が日本へ殺到したのは、バブル期の頃。当時の“国際結婚カタログ”には、16、7歳の女の子がずらりと並び、「日本の男性につくすのが夢です」「お金より、愛情を求めています」など、業者が考えたとしか思えない文句が並んでいる。
 「むかしは“花嫁の夜逃げ保証付き!安心して当店が紹介する女性と結婚して下さい!”なんてやっていましたよ(笑)」とは、中国人の国際結婚を仲介する業者の話だが、お金と国籍を目当てに結婚した中国人が夫を置いて逃げ出すことなんて、よくある話だったのだ。

 現在の中国はGDPで日本をしのぐ経済大国となったし、日本人もバブル期のように大金を持っている人ばかりではなくなった。この変化は、日本の国際結婚マーケットにどのような影響を与えたのだろうか?2012年に出版された『ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死』(石井光太/著、NHK出版/刊)に、中国人向けの国際結婚仲介ビジネスの変化が解説されている。

■“お金”と“嫁不足”のトレードオフでうまくいっていたバブル時代の国際結婚
 バブル時代、国際結婚仲介ビジネスの多くは、地方で貿易などを営む経営者が副業的に行っていたという。海外出張の際に、現地のクラブなどで知り合ったブローカーを通して、貧しい農村から“日本人と結婚したい女性リスト”を入手して日本人に斡旋していたのだ。当時、日本の農村地域は、若者の地方離れによる過疎化で花嫁不足に悩んでいた。そのため、裕福な日本人と結婚したいと願う女性たちと思惑が一致していたのである。
 一方、日本人は日本人で、魅力的な中国人女性を望む声もあるため、“営業努力”としてクラブのママと愛人関係になって、クラブに在籍するホステスを結婚相手として紹介するケースもあったとか。

■“花嫁の夜逃げ保証?”お金だけが目当ての結婚も…
 日本にやってきた中国人女性には2パターンあったという。“豊かな日本人と結婚して貧困から抜け出したい”と考えている女性は、家庭に尽くして日本に根を下ろすように努めていた。しかし、“日本でお金を稼いでいずれは帰国したい”と考えている女性は、国籍だけ手に入れたら家から逃げ出してしまうというのだからたまらない。逃亡を防ぐために、地域ぐるみで監視し合ったり、1日中チャイナドレスを着せて逃げられないような工夫をしたりもしていたのだという。
 国際結婚仲介業者には、成約時に400万円もの紹介料を払うことになるが、新婚早々逃げられてしまってはショックもでかい。少しでも心理的負担を減らそうと「花嫁夜逃げ保証」や「逃亡お詫び金」なるサービスも存在した。

■日本人以上に“好条件”を求められる中国人との国際結婚
 現在は、中国にもたくさんお金持ちはいるし、日本人もバブル時代のように羽振りが良い人ばかりではない。そのため、中国人女性との国際結婚は求められる条件がどんどん高くなっているという。“年収1千万円以上”“広い土地がある”“大きな店を持っている”は当たり前の話で、ある意味、日本の女性よりもシビアに“条件”で見定めされるという。「わざわざ日本人と結婚するのなら、中国人より条件のいい人と結婚しなければ意味がない」ということなのだろうか。

■国際結婚もIT化 ビジネスモデルはより巧妙さを増した?
 インターネットの普及により、仲介業者もホームページを運営し結婚相談所として月ごとに会費を取るビジネスに乗り出している。中国人を専門にお見合いを仲介する、I相談所では、入会資格やサービス内容などを掲載したホームページを開設し、広告を出すなどして集客。国際結婚を希望する日本人男性は、入会時の登録料は7万円程必要で、それ以降は、固定月会費1万円のほか、お見合い1回あたり1万円の料金を支払う。
 お見合いが成立して結婚が決まれば、入国管理局での手続きなどの代行料を合わせて、「成婚料」が100万円ほどになる。女性側にも成約料24.8万円を求めるが、これは男性が負担することがほとんどだという(このあたりも計算尽くなのだろう)。女性の成約料分を負担したとしても、昔と比べて成約料が安くなっているように見えるがそうではない。見合い代は毎回かかるし、他にもパーティー代、情報提供代など、様々な名目で出費は日々かさんでいくのだ。

■中国人の恋愛観を学べ?
 さらには、「中国人と日本人とでは、恋愛観のすれ違いがある」という言葉を真に受けて、「中国人女性にモテる方法」なるセミナーに参加して学習したりもする。セミナーの内容は、「中国の女性はペアルックが好きだから、Tシャツにハートを描いて、二人の写真をプリントしたものを着ましょう」「中国のバレンタインデーはプレゼント交換が基本。チョコ(手作りではない)をもらったら、お返しはバラの花。しかし、“男性は甘いものが苦手”という固定概念があるので、チョコは嬉しそうに食べまくってはいけません」といった内容だという。当然、こうしたセミナーもオプション料金だ。

 いつの間にか中国美女との結婚は敷居が高いものになってしまったんだなあ、と感じる一冊だ。
(新刊JP編集部)

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