アメリカで相次ぐ乱射事件は、この国に暗く深い影を落としている。
「今年この国で起こった乱射事件は何件?」と質問され、正確に答えられるアメリカ人はほとんどいないだろう。
攻撃用銃器を使った犯罪があまりにも多く、当事者であるアメリカ人でも、事件の一件一件をはっきりと覚えていない。
だが、自衛意識の高まりは、日ごとに強まっているようだ。いや、“自衛意識”と言えば聞こえはいいが、要は犯罪者に殺されないように、また犯罪者を自らの手で駆逐するために、強力な武器を買い求めるということだ。
そのニーズを受けたサービスが、来年開始される。
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いつでも手軽に銃を購入
インターネットがすっかり普及した今も、テレビによる通信販売は消費者の購買意欲を促す有力な手段だ。
来年早々から、アメリカで『Gun TV』というショッピングチャンネルが始まる。その名の通り、銃器専門の通販サービスだ。
その仕組み自体は、ごく普通のテレビ通販と変わりない。視聴者は『Gun TV』の指定する電話番号をプッシュするか、インターネット経由で欲しい銃を買う。
ただし、商品がダイレクトに届くわけではなく、近所のガンスミスの店に品物が届く。これは法律上、ガンスミスの仲介なしに銃の取引はできないからだ。
もちろん『Gun TV』では、様々なタイプの銃が扱われる。日本でも所持できる散弾銃や単射式ライフル、拳銃、アサルトライフル、大口径対物銃。
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特に対物銃(アンチマテリアルライフル)などは、我が国の自衛隊ですらも採用していない。そのような代物が、電話一本で買えるのだ。
駆け込み需要と株価
一方で、銃器大手のスミス・アンド・ウェッソン社の株が8年ぶりの高値に達したという。
スミス・アンド・ウェッソンは、日本でも知名度の高いガンメーカーだ。コルト・ファイアアームズと共に、アメリカの歴史を作ってきた企業だ。
「なぜ乱射事件が相次いでいるのに、ガンメーカーの株価が上がるのか?」
日本人はそう考えてしまうが、アメリカでは乱射事件の度に駆け込み需要が発生する。また、オバマ大統領を始めとした、民主党の政治家が銃規制強化を訴えた時も、同様の現象が起こる。「規制される前に買い込もう」ということだ。
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もはや、アメリカに居を構えるとしたらランボーかゴルゴ13のようになるしかないのか。そういえば、ゴルゴ13の銃規制問題を取り扱った回で、ゴルゴがこのようなことを言っていた。最後は、その言葉を引用して終わろう。
<銃を持った者同士に相互理解など存在しない。その瞬間から、戦いあるのみだ(SPコミックス第171巻『愚か者の銃』)>
【参考・画像】
※ Gun TV: home shopping channel aims to sell weapons to viewers – The Guardian
※ 米スミス・アンド・ウェッソン株8年ぶり高値−銃乱射事件で規制議論 – ブルームバーグ
※ Michael Coddington / Shutterstock
【動画】
※ ‘Gun TV’ will sell guns, but won’t ship weapons directly to buyers – YouTube