インドネシアには、実に様々なジャンルの日系企業が進出している。だが最近まで、その進出企業の花形は重工業関連社だった。
インドネシアの自動車市場は、2013年までは飛躍的な右肩上がりであった。ところが2014年からそれが一段落し、新車販売台数も緩やかに下落している。
代わりに、今後は中古車市場が一花咲かせるという説もあるが、その説明は別の機会に譲ろう。
本稿執筆時点において、インドネシアで大成功する企業は重工業分野のそれだけに留まらなくなった。
むしろ、花形の座は、小売・サービス産業に移りつつある。
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2015年の進出企業筆頭
ローソンをはじめとした多くの店舗で使える、共通ポイントカード『Ponta』を知らない日本人は、今や少数派のように思える。
実はこの『Ponta』、インドネシアにも既に進出している。しかも、2015年2月の本格展開から同12月までのわずか10ヶ月間で、会員数700万人を突破してしまったのだ。
『Ponta』を運営する株式会社ロイヤリティマーケティングが、その報告をプレスリリースサイト『PR TIMES』に掲載している。その記事から一文を引用させていただこう。
<2015年12月現在、インドネシアにおいて『Ponta』は、提携社6社8ブランド、1万2,180店舗でサービスが利用可能となり、インドネシア全域をカバーする最大級のポイントサービスに成長いたしました。>
最近では、インドネシアのコンビニ大手アルファマートが『Ponta』のサービスを開始した。『Ponta』はまさに拡大の一途をたどっている。
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2015年も、あらゆる企業がインドネシア進出に乗り出したが、最も素晴らしい業績を挙げたのは間違いなくロイヤリティマーケティングだろう。
少なくとも2014年12月の時点で、『Ponta』がこれだけインドネシア市民にウケると予想していたジャーナリストは、愚劣な筆者も含めて皆無だった。
社会問題を一気に解決
インドネシアは、慢性的な小銭不足という問題を抱えている。
ちょっとしたスーパーマーケットに行っても、大きな額の紙幣を出す行為は歓迎されない。例えば、4,200ルピアのジュースを買うのに10万ルピア札を出すというのは、この国ではマナー違反である。
店側は、それだけ多くの小額紙幣を手放す羽目になるからだ。
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だが客側も、値段の端数を合わせられるだけの小銭を、いつも持ち歩いているわけではない。
従って100ルピア、200ルピアといった小額の釣り銭は現金ではなく、アメ玉かチューインガム1枚でもらうことが多々ある。
その問題を、『Ponta』が一気に解消してくれたのだ。
小銭がない以上、店はそれに代わる価値を客に提供しなければならない。また客としても、煩わしい小銭問題を意識したくはない。
“小銭入れの電子化”は、インドネシア市民が待ち望んでいた近未来だったのだ。それが今、現実になっている。
日本とは違う経済成長の形
日本人が、今現在のインドネシアの消費ニーズを把握することは、簡単なようで難しい。
なぜなら日本人は、“経済成長=60年代の高度成長期”という意識で捉えてしまいがちだからだ。
だからこそ、「インドネシアではまず重工業製品が売れるだろう」と考える。
だが、2010年代はモノ以上にサービスが充実する時代だ。そしてあらゆる事柄が電子化され、世界の果てまで、瞬時に情報が行き届く。そのことを忘れてはいけない。
現代には現代の“常識”がある。
それを見据えて初めて、大きなビジネスチャンスを掴むことができるのだ。
【参考・画像】
※ 「Ponta」、インドネシアの会員数が700万人を突破 – PR TIMES
※ Graphs / PIXTA