これは衝撃なのか当然なのか。
ソニーが『CES 2016』で発表し、注目を集めているのは、アナログレコードからハイレゾ音源のデジタルデータに変換できるターンテーブルだ。
そしてこれは単なる懐古趣味ではない。
レコードの音源をデジタル変換
ご存じの方も多いとは思うが、『ハイレゾ』というのはデジタル技術である。
CDはサンプリング周波数が44.1kHz、量子化ビット数が16bitだが、日本オーディオ協会等の基準では、その数値のどちらかがCDよりも大きい音楽データを『ハイレゾ』と呼んでいいことになっている。つまり、情報量がCDより多いのだ。それによってより繊細で豊かな音楽が再生できるとされる。
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その『ハイレゾ』をアナログレコードから作成できるのだ。
CDは、前述のとおりサンプリング周波数44.1kHz、量子化ビット数16bitという規格で記録されたデジタルデータだから、音質はその制約を受けている。
しかし、アナログレコードの場合、録音機器やレコード盤のコンディションに左右されるとはいえ、本質的にサンプリング周波数や量子化ビット数という制約はない。理論的には『ハイレゾ』相当の音源を供給できると思われる。
今回ソニーが発表した『PS-HX500』はアナログレコードを再生できるターンテーブルを持ち、一方で内蔵されたA/Dコンバーターによって、DSD(5.6MHz)かWAVファイル(192kHz/24-bit)に変換できるという。
ただ「お持ちのアナログレコードをデジタル変換できますよ」というのではなく、「ハイレゾ音源にできますよ」というわけだ。
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また、そのためのアプリは新規に開発され、ウィンドウズPCでもMacでも簡単に曲を編集できるという。
ターンテーブルとしても高品質
筆者はレコードプレーヤーそのものには詳しくないので、表現や用語が不慣れなところはご容赦願いたいが、この『PS-HX500』の特徴を紹介したい。
『PS-HX500』は新たに開発されたストレート・トーンアームを採用し、そのアームの中心線上にレコード針を配置している。これによって優れたステレオバランスを実現している。
軽量で共振しにくいヘッドシェルはムービングマグネットカートリッジと相まって、多少曲がった盤面であってもしっかり追従する。
ターンテーブルは、レコード盤の回転を安定させ、振動を最小限に抑える、アルミダイキャストのプラッターと5mmの厚いラバーマットを使った『2スピード・ドライブ・システム』を採用している。
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内蔵フォノイコライザーは、品質にこだわった部品で構成され、剛性を確保するためにガラスエポキシ基盤にマウントされる。
音響的に不活性の高密度キャビネットが、振動や共振を遮断するための脚部とともに使用され、ダストカバーでさえ、振動を最小限に抑えるようにデザインされている。
この『PS-HX500』ターンテーブルは、この2016年春に発売予定だという(おそらく北米での発売時期)。
筆者は、ちょうどCDの黎明期から音楽を聴き始めた世代で、アナログレコードを買った経験はほとんどない。
近年、音楽がダウンロードされるようになるまで、長らくCDが音楽ソースの主役である時代が続いてきたが、『ハイレゾ』時代においては、CDの規格はいかんせん古く、音質の制約は大きい(通常のダウンロード音源も同様なのだが)。
『ハイレゾ』音源は、専用のサイト等からダウンロードするのが通常だったが、ここに来てアナログレコードから変換するという手法が出てきたわけだ。
今後、どんな音楽ソースが主流になっていくのかわからないが、この製品の登場はアナログレコードを多く所有しつづけているオーナーには朗報だろう。
【参考・画像】
※ SONY