注目される歯科再生治療。課題は歯のもととなる歯胚の培養
歯を完全に喪失してしまった場合の治療方法と言えば、入れ歯やブリッジ、インプラントといった人工物を入れるのが一般的となっています。しかし、これらの治療方法では、完全に生理的機能を復活させるのは困難です。これに代わる治療方法として、現在自家組織を用いた「歯科再生治療」が注目されています。
現在行われている歯科再生治療は、自身の機能していない歯を欠損部に移植する「自家歯牙(しが)移植」や、幼弱な歯胚(歯のもととなる細胞の集合体)を移植して歯を発生させる「歯胚移植治療」の2つです。これらの治療法は有用性が高いものの、現時点では一人の個体が持つ移植可能な歯や歯胚には限りがあるため、たくさんの移植はかないません。そこで、歯胚の数を増やす技術の開発が課題となっていました。
この課題に対して、理化学研究所(理研) 多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームは、東京医科歯科大学医歯学総合研究科と共同で研究を行ってきました。そしてこのたび、ひとつの歯胚から複数の歯胚を発生させる歯胚分割技術の開発に成功したと発表しました。
分割した歯胚から歯を生成。天然歯と同様の生理機能を確認
研究はマウスを用いて行われました。生成されて14.5日程度の臼歯歯胚を取り出し、ナイロン糸で一部分がつながった状態で分割して培養したところ、6日後には完全に分割された歯胚が生まれ、天然の歯と同等の構造を持った歯が再生されました。
研究では、生成した歯が口腔内で顎骨と生着することも確認。歯列矯正のような圧力をかけることで、歯の移動も可能です。また、痛みなどを感知する神経機能もあり、機能的にも天然歯と同等であることが確認されています。
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この技術が発展すれば、自家組織による再生医療の普及が本格的なものとなります。この歯胚分割技術は、歯胚だけではなくその他の器官に対しても適用できる可能性があるため、引き続き技術開発に取り組んでいくとのことです。歯は、食を楽しみ、健康な身体作りに欠かせないもの。この技術の実用化が待ち遠しいですね。(宮坂方子)
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