※ 前回の【未来探訪】はこちら 【未来探訪#005】3DプリントとIoTで「ものづくりの民主化」に挑むスタートアップベンチャーKabukuの挑戦 http://nge.jp/2015/12/20/post-126720
IoT(Internet of Things)や人工知能(AI)などテクノロジーの進化により、様々な産業が劇的に変化すると予想されている昨今。まさに『第4次産業革命』が、今まさに目の前で起こっている。
そんな激動の時代に、新しいもの作りの拠点として注目を浴びているのがDMM.make AKIBAだ。
話題の3Dプリンターをはじめ、電動工具や検査機器など、ハードウェアの製作に必要な機材が、個人や少人数のグループでも、比較的安い費用で利用できるワークスペース。IoTを中心に、新しいものづくりを目指す、スタートアップ企業や個人をサポートする空間として、今最も注目を浴びている“場所”のひとつだ。
そんなDMM.make AKIBAが、2014年11月に東京・秋葉原のど真ん中に出現して丸1年が経ったイマ、新しい“ものづくり”を支える最先端の現場では、一体どんな変化が起こっているのだろうか? また、今後何が起こるのか?
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今回は、そんなDMM.make AKIBAが考える『日本のものづくり未来予想図』を、3回に分けてお届けする。
お話をお伺いしたのは、DMM.make AKIBA総支配人の橋場光央氏(写真左)と、エバンジェリスト岡島康憲氏(写真右)だ。
「コミュニケーションを広げることが重要」
(インタビューした2015年12月)現在、会員数はどれくらいなのだろうか? また、サービスなどには、ここ1年で変化はあったのでしょうか?
橋場氏、
<会員の方は約400名くらいです。 現状では、主にスタートアップのチームや個人の方など、比較的少人数によるプロジェクトが多いですね。
ただし、法人様からのお問い合わせも増えてきているので、今後は法人プランも展開する予定です。 基本的なサービスは、オープン当初から変更はございません。
・ハードウェア開発に必要な機材を揃えた『DMM.make AKIBA Studio』 ・シェアオフィスやイベントスペースとして使える『DMM.make AKIBA Base』 ・製品開発やビジネスのコンサルティングを行う『DMM.make AKIBA Hub』
の3つで構成しています。>
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オープンして1年、振り返ってみてどうだったのでしょうか?
橋場氏、
<前例があまりない、新しい試みであるということもあり、まだまだ模索している段階ですね。ただ、反省は幾つかあります。
特に、ものづくりをしたい人たち同士が、もっとコミュニケーションを取れることをやりたいですね。色々な交流により化学反応が連鎖すれば、今までと違う何かが生まれると思うんですよ。
なので、2016年以降は、もっと多様なイベントをやっていきたいです。>
岡島氏、
<重要なのは、会員さんたちが、自分が作っているものや、作りたいものを、お互いにシェアできること。なので、あまり形式ばらず、いろんなことを試すつもりです。飲み会でも、プレゼン大会でも、ハッカソン的なものでもいい。また、外部の方々とのコミュニケーションも演出したいですね。
例えば、大きな民間企業、スタートアップも含めた中小企業、経済産業省などの行政 ・研究機関や大学などアカデミアといったところの方々。
そういった人たちに、ここをよく知ってもらったり使ってもらうのはもちろん、会員さんたちと繋がってもらいたいですね。ここの会員さんが増えるということもあります。
ですが、もっといいのは、例えば、ロボティクスやビッグデータなど、最先端の研究をされているところと繋がることで、より高い技術を、よりいい条件で会員さんに還元できるようになるんです。>
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「もの作りをする人を増やしたい」
橋場氏、
<あと、他のワークスペースやホビー系のスペースなどと連携させてもらうことも考えています。
これは、例えば 「ものづくりをしたいからDMM.make AKIBAに来たんだけれど、ここにある機材ではやりたい事ができない」 などといった場合に、相談してもらえれば、他のスペースを紹介するといった感じですね。
逆に、他のスペースに行った人が、そこと合わない場合にはうちを紹介して頂くなどで、相互協力ができればと思っています。>
岡島氏、
<今、日本ではものづくりをする人の数が減っています。なのに、せっかく意を決して来た人を「やりたいことができる場所じゃない」などの理由で、帰してしまうのは不幸なことです。
ものづくりをしたい人には、ビジネスとしてやりたい人もいれば、単に楽しみたい人もいる。DMM.make AKIBAでは、やはりスタートアップでビジネスをしたい人が多いから、「ちょっと世界観が違う」なんて場合もあります。
でも、そういった人たちをそのまま帰してしまうのではなく、その人に合いそうなスペースを紹介する。また、逆にうちに合った人を送客してもらう。
まぁ、相手(他のスペース)があることなので、うちの考えだけではできませんが。
でも、そういったことで、ものづくりをする人を少しでも増やしていければいいな、と思っています。>
AKIBA発の製品登場で働き方も変わる?
IoTのハードウェア製品を製造・販売し、新しくビジネスを始めたいスタートアップの人たちが多いDMM.make AKIBA。では、実際にここで作り、販売されている製品はすでにあるのでしょうか?
橋場氏、
<2016年にはちらほら出てきそうです。>
岡島氏、
<ただし、それらは、うちができる前、一昨年やその前から頑張ってきた人たちが作っているものですね。
DMM.make AKIBAができてから、会員になって頂き、作り始めた人の製品が出てくるのは、2017年末とか2018年頃になるでしょうね。
ハードウェアの場合は、プロトタイプを作り、トライ&エラーをくり返しながら製品化するため、どうしても時間がかかるんです。>
製品が販売され始めれば、DMM.make AKIBAはさらに注目を浴びるでしょうね。
岡島氏、
<それに加えて、“働き方”の見方や考え方も変わってくると思います。
インターネットの世界では、昔に比べてサーバーが安くなったり、ソフトウェアが簡単に作れるようになったことで、スモールビジネスがやりやすくなりましたよね。同じような事が、ハードウェアの世界でも起こると思います。
今までは、機材などが揃った工場などに行かないと、ものづくりはできなかった。ましてや、ちょっと試作をつくったり機材を使う練習をしようなんてことは、お金が掛かりすぎるし、工場がある企業に属さない限り不可能でした。
それが、ここであれば、多少コストがかかるとはいえ、今までより安い金額でできるようになった。「プロトタイプ製作→テスト→製品化→販売」 といった流れが、大企業に属さない少人数のチームや個人でもできる。
ここで作った製品が世に出ることで、そういった事を知ってもらえば、自ずと働き方の考え方が変わる人も出てくるでしょう。
そういった流れが、結果的にいろんな新しいイノベーションを生むんだと思います。>
【未来探訪#007】に続く
【取材協力】
※ DMM.make AKIBA