「結婚式の謎」CDを流してもOKなのに、ネット配信音源はNGーーなぜなのか?

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2016年01月19日 11:41  弁護士ドットコム

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結婚式でお気に入りの音楽を流したくても、ネット配信された音源の場合、結婚式場から断られるケースが相次いでいると、読売新聞が報じた。


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読売新聞によると、友人の結婚披露宴で余興を頼まれた女性は、「この曲は使えないので、 CDを買って持ってきてください」と式場担当者から言われた。無断使用は著作権侵害になるというのが理由だ。「CDと同じように買った曲なのに、友人の披露宴で使うことが著作権侵害と言われても違和感しかない」と不満を持ったそうだ。



結婚式の披露宴などでネット配信の音源を使用することは、なぜ著作権侵害とされてしまうのだろうか。 CDとネット配信の音源とで、なにか違いがあるのだろうか。著作権の問題に詳しい井奈波朋子弁護士に聞いた。



●CDを再生することは、著作権を侵害しない


結婚式場で音楽を再生する行為は、演奏に該当します。著作権法は著作権者が演奏権を専有すると定めていますので、結婚式場で音楽を再生するには著作権者の許諾が必要になります。



そこで、結婚式場では、通常、JASRACなどの音楽著作権集中管理団体と契約を締結し、結婚式場で音楽を再生する行為について使用許諾を得ています。そのため、CDを結婚式場で再生しても、著作権に抵触することはありません。



しかし、個人で録音した音源を使うとなると、たとえ結婚式場がCDを再生することについて使用許諾を得ていても、著作権違反の問題が発生します。



個人的に音楽を聴くためであれば音楽をCD-Rなどの媒体に録音することは、私的複製として著作権の例外になるので、著作権を侵害することはありません。また、私的複製した音源を自分で楽しむ分には問題はありません。



しかし、結婚披露宴で余興の際に参列者の前でその音源を流す場合、私的使用の範囲で複製したことにはならず、私的複製として許される範囲を超えてしまうので、複製権侵害になります(著作権法49条1項1号)。



●ダウンロード音源は私的複製なのか


配信音源の場合、購入した音源をダウンロードする行為については、2つの考え方があり得ます。(1)ライセンスに基づく複製であって、私的複製に該当しないという考えと、(2)ライセンスに基づく複製であっても、私的複製に該当するという考え方です。この問題に関しては、定説がないように思います。



「私的複製だ」という考え方だと、上記の著作権法49条1項1号が適用され、複製権侵害になるので、結婚式場ではその音源を流せません。適法にネット配信された音源をダウンロードしているのに使えないのは変な話なのですが、私的複製された音源を、私的使用の目的の範囲外で使うことになるため、そのような問題が生じてしまうのです。



「私的複製ではない」という考え方であれば、購入したCDの音源を結婚式場で流すのと同じように、問題はないはずです。ただ、結婚式場側は、私的複製が介在しないかどうかや、適法にダウンロードされたものかどうかを確認するのが難しいといえます。そのため、余興の際に、公衆の面前で配信音源を流すことは控えざるを得ないと思います。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
井奈波 朋子(いなば・ともこ)弁護士
著作権・商標権をはじめとする知的財産権、労働問題、家事事件を主に扱っております。また海外案件(英語・フランス語に対応)も扱っております。大手法律事務所は敷居が高いと思われる中小規模の事業者や個人の方に総合的なサービスを提供いたします。

事務所名:聖法律事務所
事務所URL:http://shou-law.com/


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  • ヘッドフォンで音楽を聴く以外は認めないのがJASRAC、日本の音楽は衰退していく一方、私はアーティストへのお布施と思って円盤を買いますが…最近は買いたい物が見当たらない
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