行き先は黄泉の国?リトアニア人デザイナーが手がけた「安楽死ジェットコースター」の是非

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2016年01月20日 11:40  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

「そのボタンを押したら、楽に逝ける。」

高度500メートルの高さで風を受けながら、あなたは一人きりで最後の選択を迫られる。

あなたはジェットコースターの黒い椅子に座っているのだ。

最も高い位置にゆっくりと上がるまでの孤独な2分間に、自分の人生を振り返ったことだろう。そして、頂点で動きが止まり、最後の選択が自分に委ねられている。

「FALL」と印字されたボタンを押しさえすれば、そのジェットコースターは猛スピードであなたを黄泉の国に連れて行ってくれるのだ。

それが、『Euthanasia Coaster』(安楽死のコースター)だ。

10Gの重力加速度で「脳死」に至る

この『Euthanasia Coaster』は、遊園地のデザイナーでもあるJulijonas Urbonas氏が設計したジェットコースターだ。

まだ設計段階であり、実現はしていない。


動画を別画面で再生する

作りは非常にシンプルで、500メートルの高さから一気に下ると、後は7回分の宙返りループが待ち受けているだけだ。

乗り物も、黒い座席がひとつだけである。つまり一人乗りだ。

非常にシンプルだが、頂点から下るときは、毎秒100メートル(時速360キロ!)で落ちていく。その最高速度のままループに突入すると何が起きるのか。

10Gという強烈な重力加速度がかかることで、脳内の血液は全て下半身に向かって移動してしまい、まず視覚を喪失し、すぐに脳低酸素症となり脳が窒息死する。

叫び声を上げている暇もないかも知れない。しかし安らかな瞬死だ。

ループは7回分あるが、恐らく最初のループを通過する際にこの世とはお別れしているので、残りの6回転は遺体が猛スピードで振り回されているに過ぎないだろう。

したがって、叫び声を上げているのは、地上で見守る人たちだけだ。

総走行距離は7,500メートル。2分掛けて上り、1分で下る。

「自分で死を選択する設計」の美学

Julijonas Urbonas氏の設計では、500メートルの頂点で、本人が「FALL」ボタンを押すことで最後の選択を自らに行わせる、ということがエレガントなのだろう。

誰かに殺されるわけでも、病に冒されてもがき苦しみながら逝くのではない。自らの選択の結果として死ぬからだ。

それが、デザイナーとしての、氏の美学なのかもしれない。

しかし、当然この『Euthanasia Coaster』は賛否両論を招いた。

まず、本当に安楽死できるのかどうか。恐怖に歪んだ顔のまま死ぬ可能性も高いし、糞尿にまみれた遺体になる可能性もある。

そして何より、安楽死自体を認めるのかどうか、という問題がある。

ちなみに日本では、医師が行う積極的安楽死については刑法上の殺人罪になるが、自ら「FALL」ボタンを押せる『Euthanasia Coaster』の様な安楽死は、果たしてどう判断されるのだろう。

日本でも安楽死を法的に認めるべきだとする人たちは、延命することで心身の耐えがたい苦痛が伴うことは、虐待や拷問と同じであるため、自ら死を選べるべきだとしている。

個人的には、容認派の主張に共感する。

しかし反対派は、安楽死が認められてしまうと、死ぬことの圧力を掛けて、追い込みやすい環境ができて悪用できてしまうと言う。

それも一理ある。

海外では、積極的安楽死を認めているのは米オレゴン州、米ワシントン州、米モンタナ州、米バーモント州、米ニューメキシコ州、米カリフォルニア州、スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグとなっている。

幸運なことに、「FALL」ボタンを押せるのは、一度きりである。

【参考・画像】

※ Euthanasia Coaster – Julijonas

【動画】

※ HUMAN+ EUTHANASIA COASTER_JULIJONAS URBONAS – YouTube

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