絵本の帯から学んだ、作者を思う気持ち

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2016年01月21日 10:02  MAMApicks

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絵本が大好きな娘は図書館も大好き。普段は図書館や保育園から本を借りてくることがほとんどで、書店で本を買う機会はあまりない。

しかし、年末年始の我が家は少し違っていた。サンタクロースが持ってきたのも絵本だったし、お年玉も絵本に化けた。この時期はいつも我が家に絵本が一気に増えるのだ。

図書館の本には付いていなくて、購入した本についているものがある。それが「帯」だ。
すべての絵本についているわけではないものの、たまたま手にした絵本に帯が付いていて、娘が興味を持った。

手にした絵本は、知っている方も多いであろうバーバパパのシリーズ。図書館で借りて以来、娘はこのシリーズにはまっている。


ここで少し、バーバパパの成り立ちを紹介したい。バーバパパの生みの親はご夫婦だ。アメリカ生まれの夫、タラス・テイラー氏は元々生物学や数学の教師、そしてフランス生まれの妻、アネット・チゾン氏は建築設計士だったという。そんなふたりが偶然パリのカフェで出会い、同時にバーバパパも生まれたのだそうだ。

作者が先生や建築士だったことは、バーバパパの挿絵からもうかがえる。細かいところに工夫があり、数式などが散りばめられているのだ。

さて、話を元に戻す。絵本の帯だ。帯には時として、作者や出版社の熱い思いが込められている。それに気がついたのは娘だった。

「ありがとう、タラス・テイラーさん」

そう綴られていた。娘は疑問に思う。なぜ、ありがとうなの? テイラーさんって誰?

じつはこの言葉、昨年亡くなった作者のタラス・テイラー氏を追悼して書かれたものである。

絵本には必ず作者がいる。そして実際には作者だけでなく、編集者や出版社はもちろん、外国の絵本であれば訳者もいて、彼らが一丸となって1冊の絵本が完成するのだ。その作者を偲ぶメッセージは奥が深いと思った。

モノを大切にする心は、作った人のことを思いやることで育つのではないだろうか。

いい機会なので、帯にあったメッセージの意味を娘に解説した。3歳の娘が、人間の生と死を理解できたかは甚だ疑問であるが、モノづくりの大変さと、作った人に感謝する気持ちは理解してくれたようだ。

そんなことを考えて読み進めたバーバパパは、いつもとは違った味わいがあったように思う。

絵本の楽しみ方は十人十色。何も、メインのコンテンツだけを読み進める必要はまったくない。何度も何度も繰り返し読む(読まされる?)本文は、大人にとってはいささか飽きてくることがあるのも事実だ。そんな時は、読み方に工夫を凝らしてみるといい。

オススメなのは、作者について少しばかり調べてみること。バーバパパの例になるが、作者が技術分野の出身だからこその工夫が紙面に表れており、なるほどなと感じずにはいられない。そして、似たようなことは多くの本で感じることができる。

また、作者を知れば、同じ作者の別の本に出会った時も楽しみが広がるものだ。あくまでも個人的な印象だが、絵本作家というのは得てしてお茶目なことが多く、まったく関係のない(シリーズ化されているわけではない)複数の絵本にも、何か共通の仕掛けを仕込んでいたりするのだ。

そういうことに気がつくと、なんだか当たりくじを引いたような気分になれる。読み聞かせのマンネリ化を防ぐためにも、作者情報は欠かせない。

作者について調べると言っても、わざわざインターネットで検索するまでもない。袖(カバーの端、内側に折り込むところ)のところや最後のページなどに、簡単な作者紹介が載せられていることが多いからだ。

帯と併せてこれらの部分にも目を向けると、絵本を通じた親子のコミュニケーションも話題が広がる。せっかく手にした絵本、本文だけではなく、隅々まで読み込んでみることで、きっと楽しみ方の厚みが増すだろう。

西方 夏子
電機メーカーにて組み込みソフトウェアの開発に携わったのち、夫の海外赴任に帯同して5年半ほどドイツで暮らす。2012年に同地で長女を出産後、日本に帰国。現在はフリーでiOSアプリの開発や書籍の執筆を行う。

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