≪さあ、お待ちどおさまでした「大喜利」のコーナーです。まずはですね、子どもの夜泣きで今日もあくびをこらえてらっしゃる、みなさんがたのご挨拶からどうぞ。≫
―― 先日、筆者のTwitterタイムラインには『
#子たんぽレビュー』というハッシュタグが並んだ。
これは子ども(さらには夫、妻、犬、猫など)のあたたかさを湯たんぽにたとえた、いわゆる「Twitter大喜利」と呼ばれるたぐいのものだが、ユーザーレビュー系のフォーマットにのっとった上、140字で収めるというものであった。
現在その一部はtogetterにまとまっている。
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子たんぽレビューhttp://togetter.com/li/925200
最初に、発案者の漫画家・瀧波ユカリさんが1本投稿することでフォーマットの方向性が決まり、あとは怒涛のように投稿される。
その、自然発生的にワーッと広がっていく様子をリアルタイムで見ていた筆者だが、いざ書こうとするとなかなかうまくできないのが悔しい。
「使用年数+感想+リピートの有無+不満点+星の数」というのが基本フォーマットなのだが、好レビューが並びはじめるとそこに「トラブル報告です」とぶっこんで来る人が出るなど、単体だけではなく流れでも笑える。
Amazonや楽天などのレビュー欄に慣れ親しんでいる人なら「あるある!」と楽しめる内容であった。
■日本で独自の進化を遂げた“ネタ文化”
言うまでもないが、大喜利の歴史は古い。
詳細は割愛するが、寄席の余興で行われていたところから、近年ではテレビにも広がり『笑点』はもとより、『IPPONグランプリ』や『着信御礼!ケータイ大喜利』、イベントの「ダイナマイト関西」などが、「大喜利」というワードから思いつくところだろう。
「大喜利」は我々の根底にある“ちょっとおもしろいこと言いたい欲”をほどよく刺激する。
酒席でのおじさんのギャグにはじまり、ラジオのハガキ職人など、よく考えると謎かけ的な遊びは日常のいたるところに潜んで、私たちは日々それに接している。筆者も、時々しょーもないネタを原稿に混ぜて、どのくらいの人に気づいてもらえるか、という遊びを仕込むことがある。
インターネット時代に入ると「2ちゃんのコピペ」と呼ばれる、とある定型文を変化させて笑いをとる遊びに人々は興じるようになった。
そしてTwitter時代になると“140字で収める”という制約がつくことで、よりコンパクトに凝縮された笑いを楽しむようになっていくのだ。
いずれも誰かひとりが言いはじめ、自然発生的に盛り上がる“祭り”──。
この、「暗喩で察して楽しむ、日本語の特徴を駆使した、瞬発力と笑いを競う遊び」は、体育会系ノリには決して混ざることができなかった、筆者のような人間にはもってこいのおもちゃであるが、いかんせんうまく使いこなすにはテクがいる。
我が家の5歳児はちょうど“おもしろいこと言いたい期”に入り、一度ウケたギャグを延々と言い続けるのだが、「いいか、一度笑いをとったからって、同じ客に同じネタは二度通じない。笑いは瞬発力だ!」と叱ったあと、私はいったい何を育てようとしているのだ、と我に返るのだった。
■“生活時差のないクラスタ”で盛り上がりやすい「Twitter大喜利」
今年もまだはじまったばかりだというのに、どんよりしたものばかり報道で目にしてしまった1月。
「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ……」と毒のひとつも吐かないと、こちらの心の平穏がたもてないのではないか、という気さえしてしまう。
ああ、5年前の春がちょうどこんな気持ちだった。
おもしろいもので周りを満たしていたい……。
もちろん、おもしろいことをつぶやいたからと言って、それでお金になるわけではないのだが、参加していっしょに盛り上がる楽しさのようなもの、学生時代の体育祭などはずっと斜にかまえてきた筆者だが、この歳になって妙に求めたくなるときがある。
ちなみに、日本国内でたびたび起こる“大喜利ハッシュタグ”の盛り上がりは、サンフランシスコのTwitter本社も認識しており、アメリカと違い、国内に時差がないことで盛り上がりを加速させているのではないか、と考えられているそうだ。
【参照記事】
「“バルス”は迷惑?」「大喜利タグって日本独特?」――Twitter本社でいろいろ聞いてきた|ITmedia ニュースhttp://www.itmedia.co.jp/news/articles/1410/29/news035.html
大喜利ハッシュタグでいうと、過去にも「ガンダム育児」「ドラクエ育児」などあったが、育児クラスタの大喜利は盛り上がりやすい。
先ほどの“時差”というロジックで言えば“子育て層の生活時間帯がだいたい同じ”ということも起因するのではないだろうか。時間の制約の中、瞬発力と発想力を用いて笑いを生む遊びは、育児の息抜きに向いている。
これまでブレイクしたネタを考えるに、世代的にだいたい30〜40代、比較的同じようなカルチャーのなかで育ってきて“共通言語”があるということ。
そして、テレビの黄金期に育っているため、毎週日曜の夕方、刷り込みのようにお茶の間で“大喜利トレーニング”をしていたのではないか。
と仮説を立てたところで……
≪どうやらお時間が来たようです。
ここらでお開きといたします。またお目にかかりましょう。≫
ワシノ ミカ1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。