家庭用マッサージ器は売れ筋の家電製品だが、ここ数年で深刻な事故も増えているという。
結論から先に行ってしまうが、マッサージ器に頼り過ぎてはいけない。何しろ意思を持たない機械に身を委ねるということだから、「ちょっとここは弱く押してください」と指示を出すことはできない。
だから、過度な圧迫による怪我が発生してしまう。皮膚の擦り剥けや内出血などはまだ軽いほうで、中には脊椎損傷に至ってしまうケースもあるという。
もちろんこれを根拠に、「マッサージ器は危険である」と主張する気はない。「誤った使い方をすれば大変な事態に陥る可能性がある」ということだ。
国民生活センターが、マッサージ器による事故の報告書配信しているので、今回はそれを基に執筆したいと思う。
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温泉施設で骨折!?
あまり知られていないことだが、厚生労働省も消費者庁も家庭用マッサージ器に関する注意喚起を、過去複数回に渡って出している。
だが、それが一般に周知されることはあまりなかったようだ。マッサージ器による深刻な事故は、なくなっていない。
ここで、事故の例をいくつか挙げてみよう
■マッサージチェアを2年間、ほぼ毎日使用していた20代男性が脳脊椎漏出症に。
■70代女性がマッサージチェアの背面押圧アームに身体を挟まれ、肋骨を骨折。
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■60代女性が温泉施設でベッド型マッサージ器を使用した際、背骨を強打。従業員に「痛い、痛い」と叫ぶも、相手にしてもらえず。
■フットマッサージ器を使用していた80代女性。途中で痛みを感じたが、操作方法が分からず使用を中断することができなかった。
これらを見ると、“過度の連続使用”、“設計不良”の他に“自分で操作できなかった”といった要因があるようだ。
高齢者には分からないリモコン操作
「どこに停止ボタンがあるか分からないなら、とりあえずリモコンをいろいろ操作すればいいじゃないか。どうして何もしなかったんだ?」
そう考えるのは、60代より上の世代の発想を知らないからだ。若い頃に、手回し式計算機や真空管テレビを使っていた人々は、「機械を適当に操作したら壊れてしまう」と考えている。
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なぜ使い方の分からないスマートフォンを“とりあえずいじってみる”ということができないのか? それは「スマホが壊れる」と思っているからだろう。テレビという家電が電子機器に変貌して随分経つのに、今でも「チャンネルの回し過ぎは故障の原因になる」と考えている人すら存在する。
そうした発想のギャップについて、今まであまり考慮せず製品を開発してきたメーカー側にも確かに問題がある。
それを理解すれば、開発の重点は“操作機構”に置かれるだろう。これらに限らず、積極的に推進されている最先端IoTにおいても、操作性はかなり重視されている。
“文明の利器”は正しく使えてこそ“利器”たるのである。
マッサージ器に乗る前に
だがリモコンの操作方法が簡単になったとしても、やはりマッサージ器の使い過ぎは健康を損ねてしまう。個人に最適化されていない汎用的な構成だからだ。(人工知能が健康状態を把握し、最適な“施術”を行う時代が来れば話は変わってくるだろうが)
マッサージ器の上に乗る前に、まずは以下に紹介するストレッチを試してみてはいかがだろうか。
筆者もよくやるこのストレッチは、特に腰と下半身の倦怠感によく効く。
まずは、左足を半歩前へ。
次に、腰を右手方向(時計回り)に回す。尾てい骨の左側面を前に向けるような感覚だ。
そして、肩を左手方向(反時計回り)に回す。すると背中の左側面の筋肉が伸ばされる。
一種のツイスト運動だが、これは筆者の考案したストレッチではない。「野球選手がネクストバッターボックスでやる動作」と言えば、分かる人には分かるだろう。
この捻れの体勢を、10秒間維持してみよう。それが終わったら、今度は左右を逆にしてやる。これを片側2回繰り返すと、腰が随分楽になる。ただし、やり過ぎは禁物だ。
また、足の倦怠感にはこのようなストレッチもある。まずは自分の太ももの高さほどの段差に、こうして足を乗せる。
この状態で膝を伸ばし、そのまま立っている足の膝を曲げる。
その際、急がずゆっくりやるのがポイントだ。無理のない位置まで身体を落としたら、次はまたゆっくりと元の位置に戻る。これは左右1回ずつで構わない。
もちろんこのストレッチは筋力アップが目的ではないのだから、バランスを崩さないよう何かに支えられながらやっても問題はない。
しかもこれらは、マッサージ器とは違ってスペースをまったく取らずコストもかからない。
仕事の合間やちょっとした空き時間でもできるお手軽ストレッチだ。ぜひお試しあれ。
【参考・画像】
※ 家庭用電気マッサージ器による危害 体調を改善するつもりが悪化することも!特に高齢者は注意が必要 – 国民生活センター
※ Bojan Milinkov / Shutterstock