coldrainは国内ラウドロックと海外メタルをどう融合させ、オリジナルな音楽を作り出したか

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2016年01月26日 17:11  リアルサウンド

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coldrain(Photo by JulenPhoto)

 LOUDNESS、X JAPANと80年代から活躍するレジェンドたちについて触れてきたこの連載。両バンドともヘヴィメタルサイドに寄った内容だったこともあり、ここから数回は昨今のラウドロックサイド寄りの話題をしていきたいと思う。


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 というわけで、まず紹介するのは名古屋出身の5人組バンドcoldrain。彼らやCrossfaithといった“ゼロ年代”以降のバンドが、現在の国内ラウドロックシーンと海外のメタルシーンとの架け橋になっていることは紛れもない事実だろう。そんなcoldrainの本格的な海外進出は意外にも2014年以降のこと。2014年にBULLET FOR MY VALENTINEやBRING ME THE HORIZONなどが所属するイギリスの大手マネジメント『Raw Power Management』と契約したのを契機に、海外リリースやワールドツアーが続くことになる。


 それまでのcoldrainは2008年11月の1stシングル『Fiction』リリース以降、国内を中心に活動を展開。2008年というとX JAPANが東京ドーム3DAYS公演で華々しい復活を果たし、coldrainと同じレーベルに所属するマキシマム ザ ホルモンはシングル『爪爪爪/「F」』が大ヒット、DIR EN GREYが7thアルバム『UROBOROS』を世界17カ国で同時発売し、LOUDNESSのオリジナルドラマー樋口宗孝が急逝するという、今となってはヘヴィメタル/ラウドロックにおける転換期だった年だ。ちなみにCrossfaithはその翌年、2009年4月に1stアルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』をインディーズから発表している。


 coldrainはフロントマンMasato(Vo)を中心に、Y.K.C(G)、Sugi(G)、RxYxO(B)、Katsuma(Dr)という不動の5人で今日まで活動。ヘヴィメタルよりもポストハードコア、スクリーモ、エモなどの色合いを強く感じさせる1stフルアルバム『Final Destination』(2009年)こそ海外の同系統バンドからの影響が見え隠れするが、続く1stミニアルバム『Nothing Lasts Forever』(2010年)以降は作品を重ねるごとに独自のオリジナリティを確立させていく。海外モダンメタルや国内ラウドシーンの流行を適度に取り入れつつも、強度のあるギターリフとパワフルなビート、スクリームとクリーントーンを緩急自在に操るボーカル、日本人が好む“泣き”の歌メロ(これはエモというよりも旧来のヘヴィメタル的と言えるかもしれない)……こういった要素が若いファンから往年のメタルファンまで幅広い層に愛される要因ではないだろうか。


 彼らの楽曲/サウンドが一気にレベルアップしたのは、間違いなく2013年発売の3rdフルアルバム『The Revelation』でのこと。その前作にあたる2012年の2ndミニアルバム『Through Clarity』からプロデューサーにPARAMOREやKILLSWITCH ENGAGE、PAPA ROACHなどで知られるデヴィッド・ベンデスを迎えてアメリカでレコーディング。『The Revelation』も同じくデヴィッドのプロデュース作品だが、2作品の間には大きな違いがある。過去にcoldrainにインタビューした際に聞いた話だが、『Through Clarity』がバンドの意思を尊重して制作されたのに対して、『The Revelation』は海外での活動を想定し、日本のマーケットを意識せずに制作されたものということ。実際、デヴィッドも『The Revelation』制作の際には楽曲に対してかなり口を出したという。その成果が、海外のメタル/ラウドロック作品にも引けを取らない『The Revelation』という傑作につながったのだ。事実、このアルバム発表を機に彼らの活動は大きく変化していく。「日本のマーケットを意識せずに制作された」にも関わらず、同作はオリコン週間ランキングで過去最高の7位にランクイン。また先にも書いたように同年末に海外の大手マネジメントとの契約、そして翌年には一部内容を変更して『The Revelation』を海外レーベルからリリースすることになる。


 昨年10月には4thフルアルバム『VENA』を世界同時リリースしたばかり。本作ではアヴリル・ラヴィーンやギャヴィン・デグロウ、オリー・マーズ、PENTATONIXなどのポップフィールドからPAPA ROACH、THE USEDといったヘヴィロックまで幅広く手がけるブランドン・パドックをプロデューサーに迎えて制作されており、『The Revelation』でのアグレッションをそのままに、coldrainの持ち味のひとつである“泣き”度が高まった、旧来の魅力と海外進出後のタフネスが絶妙にミックスされた集大成的作品と言える。プレスリリースにある「ラテン語で『VENA』(ヴィーナ)=『血管』自らの音楽ルーツを辿り、日本で培った経験や心を世界発信すべく想いを託した渾身の全11曲」という解説も納得いくものだし、この“らしい”アルバムが世界同時リリース第1弾作品というのも非常に興味深い話だ。


 そんな自信作を携え、coldrainはアルバム発売前の9月下旬からBULLET FOR MY VALENTINEのヨーロッパツアーに帯同。同年11月下旬からは「THE GREATER THAN TOUR」と題したUSツアーも行なった。全62公演にわたるワールドツアーを終えた彼らは、待望の国内ツアー「VENA JAPAN TOUR 2016」を今年1月9日からスタート。私も1月15日にZepp Tokyoで行われた東京公演を観たが、とにかくすべてにおいてスケールアップしたライブパフォーマンスにただただ驚かされた。まだツアーが終わっていないのでセットリストやステージ構成など詳細は控えるが、とにかくバンドのアクションをはじめとするすべてが「外タレ」化していたのだ。これが海外で揉まれた結果か……と終始呆気にとられ、そしてすべてが終わったときには思わずニヤリとしてしまう、そんなライブだったと言えば伝わるだろうか……いや、わかりにくいか。彼らのライブを収めた映像作品は過去に2作品(2011年発売の『THREE DAYS OF ADRENALINE』と2014年発売の『EVOLVE』)リリースされているが、3rdフルアルバム『The Revelation』発表後の集大成的ライブを収めた『EVOLVE』を超える、メタル/ラウドロックファン以外にも存分にアピールする強烈なライブが繰り広げられているのだ。coldrainのライブはこれまでも素晴らしいものばかりだったし、バンドだけではなく観客と一緒に作り上げるあの激アツな空間は味わった者でなければ知り得ない独特の魅力がある。そういう意味でも、『VENA』を発表して海外のシーンで戦ってきたこのタイミングで彼らのライブに一度触れてみてほしい。


 coldrainは3月から再びアメリカでツアーを行う(カナダのポストハードコアバンドSILVERSTEINの全米ツアーに帯同)。帰国後の4月に『MONSTER ENERGY OUTBURN TOUR 2016』にて、過去何度となく海外で共演してきた盟友BULLET FOR MY VALENTINEと日本で対バンツアーを行う。Masatoは先の東京公演で「BULLET FOR MY VALENTINEのメンバーに日本のファンがいかにすごいかを何度も伝えてきた。それを証明するために、ぜひこのツアーに足を運んで、みんなの本気を見せてほしい」というようなことを口にしている。coldrainが結実させたオリジナルな音楽性、そして観客と一緒に作り上げる彼らならではのライブスタイルを生で体感できるだけでなく、BULLET FOR MY VALENTINEのような海外の第一線で活躍するメタルバンドといかに同じレベルで活動できているかが確認できるという意味でも、絶好の機会になりそうだ。


 最後に、Zepp Tokyoでのワンマンライブを見終えた後に感じたことをもうひとつ記しておきたい。coldrainにとって、もはやZeppクラスの会場は小さすぎる、と。あの日のライブを観ながら、大会場で圧巻のパフォーマンスを繰り広げるバンドの姿が目に浮かんだのだから……BULLET FOR MY VALENTINEやBRING ME THE HORIZONがそうであったように、coldrainがアリーナクラスで単独公演を行ったり、大型フェスのメインアクトに選出される日も、そう遠くないはずだ。(西廣智一)


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  • 記者・・・三行にまとめろ うだうだ長すぎる
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