牛乳の賛否論争から考える“ママ視点”のありよう

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2016年02月01日 10:31  MAMApicks

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昭和後期生まれ世代の私は、「牛乳を飲めば背が高くなる」という牛乳神話の中で育ったので、最近ママ友の間でたびたび話題になる、「牛乳有害説」「ミルク・パラドックス(※カルシウム・パラドックスとも)」の話は衝撃的だった。

「ミルク・パラドックス」とはつまり、「カルシウムが豊富とされている牛乳は、実際には飲むほどに骨が弱くなる」という、以前の牛乳の価値観からすると大きな矛盾となる話だが、私も自分がママになってから知った話である。

一般人なら20才も過ぎれば「これから背を伸ばそう!」と考える人はそういないと思うので、牛乳の賛否について情報感度が高くなるのは、育ち盛りの子どもを抱えたママであるということも納得がいく。


ただ、とくに女性は、「ダイエット視点」から脂肪分の多い牛乳を避ける傾向もあり、私自身、高校生以降は日常的に牛乳を積極的に飲むこともなかったので、もしかしたら過去にどこかでこの話題を耳にしたことはあったのかもしれないが、記憶に残るほどではなかったようだ。

――「牛乳を飲むと骨が弱くなる」という説。
それは、人間の体内でのカルシウムの貯蔵方法に要因がある、とされている。

人間の体内のカルシウム存在量は体重の約1〜2%。さらに体内のカルシウムの99%は骨や歯の中にあり、残りのたった1%が血液やリンパ液などの体液の中に存在しているという状態。

牛乳に含まれるカルシウムは、摂取後に急激な血中カルシウム濃度上昇を引き起こすので、体が「カルシウム過剰」と判断し、骨に貯蔵されていたカルシウムを放出してしまい、尿から排出してしまう。その結果、牛乳を飲む前と飲んだ後で、体内のカルシウム量が減る事態につながってしまう、というもの。

さらに、牛乳摂取量が多い世界4大酪農大国(アメリカ・スウェーデン・デンマーク・フィンランド)で、骨粗しょう症率が高く、その原因は「ミルク・パラドックス」のせいだと言われている。

というのが、おもな論調である。仕組みや海外事例を知れば「なるほど」と思ってしまいそうだし、この字面を読むだけで完結してしまえば、たしかに説得力がありそう。

ところが、「カルシウム過剰は尿からの排出を促す(※1)」という理屈も、「世界4大酪農大国で骨粗しょう症が高い(※2)」のくだりも、これを明確に否定する情報がある。

※1:牛乳の飲みすぎは骨粗鬆症を招くのか(エーザイの医療関係者向けサイトより)
http://www.pariet.jp/helpful/vol55/no570/sp23.html
※2:牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!(一般社団法人Jミルクのサイトより)
http://www.j-milk.jp/kiso/uwasa/uwasa6/index.html

最近は、こうした「ミルク・パラドックス」のような情報を、敏感に意識しているママ人口が多いように感じる。そして日本では、現在も保育園や幼稚園・学校給食の場では、あたりまえのように牛乳が提供されており、そのような保護者意識とどのように付き合っていけばよいか、少々戸惑いを感じる場面がある。

たとえば、「我が家では牛乳を飲ませていないので、学校でもうちの子には牛乳を飲ませないでください」という保護者も出てきたとか。「ミルク・パラドックス」の熱狂的な信者でなければ、いささかモンスターペアレント的な雰囲気を感じざるを得ない気もする。

家庭では子どもに、「牛乳は体に良くないから飲まないほうがいいのよ」と言っているのに、「学校で出された牛乳は飲みなさい」と、親と学校の対応に矛盾が生じるのが嫌だというのも分かる。

重度の食物アレルギーのような生命に関わることであれば、学校に対して「うちの子にはこの食材を与えないでください」と要求する行為は無論必要なことであり、アレルギーについての社会的理解も定着してきた。

しかし「ミルク・パラドックス」のように流布してしまった情報については、今後もしばらく「家庭内の方針」と「社会での対応」の間で騒動を起こす事態が続きそうだ。

私自身、現在は食育アドバイザーという仕事をしているため、牛乳に限らず、さまざまな食品に対する賛否両論には注意してアンテナを張るようにしているが、知れば知るほど個々の食品には良い効能と悪い効能の二面性を秘めていることが多いと気づく。


ふと、宗教上の理念に反するということで、学校の公式行事である運動会の騎馬戦に参加できなかった友人がいたことを思い出した。友人自身が「参加できない」と先生に伝えたのではなく、ご両親が先生に「参加させないでくれ」と伝えたのだった。牛乳問題とはテーマを異にするが、「家庭内の方針」と「社会での対応」という点では共通性がありそうだなと思った。

宗教ではないものの、「菜食主義」や「オーガニック志向」なども、いわば個人の信念に通じるもの。多くの場合、子ども時代は子ども自身がその信念を選んでいるわけではなく、親の選択によって影響を受けているだけだと思うので、「親の信念」を社会の場へどのように適応させるのか、とても悩ましくも重要なことであろう。

ひとつの正解がある話ではないが、自分の中でいろいろ考えてみた結果、信念や行動は「個人の選択」に委ねられる要素が大きいので、子どもにはその「選択力」を身につけて欲しいなと思った。

世の中は情報過剰で、さまざまな事柄に対しての賛否があふれているが、 「私自身の信念や行動が、子どもにとってどんな影響が?」と考えることが、“ママ視点で考えること”なのかもしれない。


ちなみに、現在2才になる私の娘は2ヵ月ほど前から保育園へ通い始めていて、それまで与えていなかった牛乳が大好物になっている。「ぎゅうにぅ、のみたいよー!」と言う娘に、「ミルク・パラドックス」うんぬんを語るつもりもまったく無いので、現在は冷蔵庫に牛乳を常備して“ほどほど”に注いであげるようにしている。

森田 亜矢子
コンサルティング会社、リクルートを経て、第一子出産を機にフリーランスに。現在は、Baby&Kids食育講師・マザーズコーチング講師・ライターとして活動中。2才の長女と今春第二子が誕生予定のママ。

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