学習塾が危ない!保護者がわが子のためにすべきこと

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2016年02月04日 09:41  JIJICO

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JIJICO

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学習塾の合格者数水増しは常態化


昨年の秋、国内最大手の学習塾チェーンで大学生のアルバイト講師に対する賃金未払いが発覚して大きな社会問題となりました。今年に入ってからも、神奈川県の大手学習塾において同様の事例が報道されたことから、いわゆる「ブラックバイト」は単発ケースではなく業界全体で蔓延していることが推測されます。


その背景には、この20〜30年で個別指導が全国に約5万ある教室の売上高の半分近くを占めるまでに成長し、多くの講師を確保することが必要になり、人件費の抑制が経営上の命題となっていることがあげられます。


学習塾業界を巡っては、粉飾決算や不正融資など、一般常識では考えられない事例も頻繁に報道されています。
より身近なところでは、発表された合格者数が水増しされているかどうかを巡り、ライバル塾同士が訴訟合戦に至ったケースさえあります。極めて次元の低い話で、教育に携わる者としては情けない限りですが、この程度の水増しは学習塾業界では、常態化していると言ってもよいでしょう。


教育業界のコンプライアンスに対する意識は金融業界の半分


学習塾業界全体を見ても、コンプライアンス意識の醸成に積極的に注力する体制になっていません。学習塾協会が主催するコンプライアンスセミナーは、全国3カ所で年1回、わずか3時間の講習でお茶を濁す程度。受講者も数十人で、大手チェーンの所属者もいません。実際、教育業界のコンプライアンスに対する意識は金融業界の半分という調査結果もあります。


学習塾業界と金融業界のコンプライアンス意識に大きな差があるのは、外資による市場参入と監督官庁による規制の強弱に原因があるように思えます。日本で独自に発展した学習塾文化を、海外企業が理解して市場参入するのは容易ではありません。


「消費者=保護者」による厳しい監視の目が学習塾業界浄化の鍵


また、文科省による学習塾業界に対する指導も学校法人に比べればはるかにゆるいものです。ただし、自由度が高いために柔軟な発想で公教育より進んだサービスを提供できる面もあります。


学習塾業界に対する政府の規制の代わりに、「消費者=保護者」の厳しい監視の目が業界浄化の鍵となってきます。


合格者数を水増しするなど論外ですが、発表された合格実績を鵜呑みにして塾の良し悪しを判断する保護者側にも責任があると言わざるを得ません。たとえ合格実績が正しいとしても、「A塾は合格者数が多い」⇒「わが子をA塾に入れた」⇒「だからわが子は合格する」という3段論法が成立しないことは、少し考えればわかることです。志望校合格は、生徒本人の努力の賜物であって、塾の貢献度など一部に過ぎません。


わが子の教育を選ぶことは保護者の責任


合格実績や偏差値、口コミ、派手なCMなど、ちまたにあふれる種々雑多な情報にまどわされることなく、確固たる独自の価値観を持ってわが子の教育を選ぶことは保護者の責任です。


同じ系列の塾でも教室長が違えば指導のレベルも異なりますし、実際に担当する講師が毎回コロコロ変わるようでは継続的な指導など期待できません。保護者は複数の学習塾に自ら足を運んで教室長の教育哲学や講師の指導歴などを直接確認し、どの塾がわが子のニーズに最も真摯に応えてくれるか真剣に探索すべきです。


天然資源の少ない日本にとって「人財」は重要な資産です。その人財の教育において、良くも悪くも学習塾が一定の役割を果たしていることも事実です。それゆえ、学習塾業界が高い志とモラルを持つことは、日本の将来にとっても重要です。学習塾を選ぶ保護者側にも明確な目的意識と厳格な選球眼が要求されるのです。



(小松 健司・21世紀教育応援団)

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