「もうあかん やめます!」掲げ20年、名物靴屋が本当に閉店へ 法的にはどうなの?

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2016年02月04日 10:21  弁護士ドットコム

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「もうあかん やめます!」という垂れ幕を20年以上、店の前に掲げて営業してきた大阪市北区の靴屋「靴のオットー」が2月20日をもって、本当に閉店する予定であることが話題になっている。


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産経新聞の報道によると、店主は靴小売店で勤務後、1977年に独立して、ビジネス街の西天満で開業した。ただ、バブル崩壊で客足が激減したため、「ありのままの思いを垂れ幕にしてみたら」と1993年ごろに思いついた。



そこで、店のひさしのテントの上に、「もうあかん やめます! 換金セール」と書いた垂れ幕を掲げると、道行く人の話題になった。ほかにも、「格差社会を是正せよ。身長の格差は当店で。人は見た目が9割だから!」「横綱も、この店も土俵際。出直しセール」などの垂れ幕を掲げてきた。



ただ、経営が上向いたわけでもなく、店主の体調悪化に伴い、2015年11月末に閉店することを決めた。2015年に垂れ幕が行方不明になったため、今は「もうあかん やめます。」の看板を掲げているそうだ。





大阪の名物ともいえるこの店について、無粋かもしれないが、あえて法的に分析すると、どうなるだろうか。「やめます!」と言っているのに、20年以上も営業を続けてきたことは、問題ないのか。前島申長弁護士に聞いた。



●消費者を誤認させたかどうか


「本当は店じまいをする意思がないにもかかわらず、あたかも店じまいをするかのごとく装い、在庫一掃の安売りセールである旨を表示して、大量の客足を呼び込む商法を『閉店商法』といいます」



法律ではどう規制されているのか。



「景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の4条1項2号では、事業者が、自己の提供する商品・サービスなどの取引で『不当表示』をすることを禁じています。すなわち、価格などの取引条件について、『実際のものよりも著しく取引の相手方に有利であると誤認される表示』をして、不当に顧客を誘引することを禁止しています。



そのような表示は、一般消費者の自主的で合理的な選択を、阻害する恐れがあるからです」



では、「もうあかん やめます」も、景品表示法で禁止された「不当表示」にあたるだろうか。



「閉店商法の場合、社会通念上、一般消費者に『閉店までの一定期間のみ特別な値引きが行われている』との認識をもたせるといえます。つまり、購入価格という取引条件について、『閉店セールの期間だけ特別な価格で商品を購入できる』との誤認を与えることになりますので、不当表示(有利誤認表示)に該当する可能性があります。



ただ、『もうあかん やめます』の垂れ幕はメディアにも取り上げられ、20年以上も、話題作りのためのユニークなキャッチコピーだととらえられていたようですので、いわゆる『閉店商法』とは言い難いのではないでしょうか」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・労災事故などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。交通事故については、被害者側の損害賠償請求の他に加害者側の示談交渉・刑事弁護も扱う。
事務所名:前島綜合法律事務所


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