専業主婦の再出発…別居中の経済的不安はこうして解決!

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2016年02月09日 08:51  弁護士ドットコム

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女性が別居や離婚したいと思っても、踏み切れない理由は「経済力」だといいます。


夫の浮気に直面した女性が、弁護士ドットコムの法律相談に「専業主婦なので経済力もなく、別居したくてもできません。結婚生活を続けながら働いて、お金を貯めてから別居するしかないのでしょうか?」と投稿しました。


女性によれば、夫は浮気発覚後も「私は専業主婦だから、離婚するはずがないと思っているっぽい」といい、なんの危機感も罪悪感も感じていないようです。しかし夫の浮気を許すことはできず、離婚を考えています。ただ、夫は離婚に応じそうもないため、女性は別居を始めることを考え始めました。


しかし、心配なのは経済力。「資格を持っているので、仕事はみつかりそうです」というものの、今ある貯金は30万円だけ。2人の子どもの保育料や生活費、引越し代、家賃などで貯金がなくなるため、経済的には安定しそうにありません。


浮気をした夫は何の変わりもなく生活ができるのに、自分と子どもは経済的に厳しい環境に置かれることに女性は納得がいかないようです。別居中でも生活費を夫に請求できないのか、大和幸四郎弁護士に詳細な解説をしていただきました。


A.  離婚していない限りは夫婦。夫に生活費を請求できます。


夫婦が結婚生活をしていくうえで必要なお金のことを、「婚姻費用」と呼びます。具体的には、居住費や生活費、子どもの学費などを指します。夫婦には法律上、それぞれの収入などに応じて婚姻費用を分担する義務があり、収入の多い方がより多く負担します。この義務は、結婚している限り続きます。


ご相談者は現在別居中ということですが、離婚していない以上は夫婦です。夫は、婚姻費用を分担する義務があります。ご相談者は、夫に対して、別居中の生活費を支払うよう請求することができます。


夫に婚姻費用を請求して、すんなりと支払ってくれれば、それで問題ありません。問題は、夫が支払ってくれないケースです。そのような場合は、家庭裁判所に、「婚姻費用分担の調停」を申し立てて、調停委員をまじえた話し合いで金額を決めることになります。


調停でも話がまとまらない場合は、家庭裁判所の審判を求めることになります。審判では、裁判所が夫婦の収入や子どもの人数と年齢などを総合的に考慮した上で、適当と思われる婚姻費用の支払いを命令することになります。


調停、審判を経て、夫から妻に生活費を支払うよう取り決められたとしてもなお、夫が支払いを拒否するケースもみられます。このような場合は、さらに裁判所に申し立てを行い、夫の財産に強制執行をかけることも可能です。


当面の生活費に困窮し、一刻も早く支払いが必要な場合には、応急処置としてこんな方法もあります。「婚姻費用分担の審判」を申し立てると同時に、「審判前の保全処分」を申し立てるという方法です。


申し立てが認められれば、裁判所から夫に、婚姻費用の仮払いを命じてもらうことができます。「審判前の保全処分」で認められる金額は、ケースバイケースですが、今回のように夫の浮気が別居のきっかけになっている場合は、必要とされる生活費が全額認められることが多いでしょう。逆に、自分の浮気が原因で別居に至ったような場合は、大きく減額されたり、請求自体が認められない可能性もあります。


婚姻費用については、同居している間はあまり問題になりません。しかし、夫婦関係がうまくいかなくなって別居した場合には、大きな問題になることが多いですね。なお、婚姻費用の請求が認められるのは、請求した時点からが原則です。それより前にさかのぼって請求することは難しいので、別居を始める前に、生活費について話し合っておくのが理想的ですね。




【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月〜2012年3月、佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会委員長。現佐賀大学客員教授。借金問題、刑事・男女問題など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。

事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/


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