全国初の「ヘイトスピーチ対策条例」が大阪市で成立ーーどう評価すべきか?

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2016年02月13日 11:11  弁護士ドットコム

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大阪市議会は1月中旬、全国ではじめてヘイトスピーチ対策の条例を制定・公布した。大阪市の吉村洋文市長は、この条例を「運用準備と周知の期間を考え、7〜8月に施行したい」との考えを示している。


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大阪市の条例は、ヘイトスピーチについて「特定の人種や民族の個人・集団を社会から排除し、憎悪や差別意識をあおる目的で誹謗中傷するもの」などと定義。大学教授や弁護士らが委員となる「大阪市ヘイトスピーチ審査会」が発言内容を審査、その意見をもとに大阪市がヘイトスピーチを行ったと認定した団体などの名称や発言内容、氏名を公表する。



当初、条例案には、ヘイトスピーチに関する訴訟や仮処分等をする場合には、予算の範囲内において、費用の貸し付けなどの支援をするとも盛り込まれていた。しかし、最終的には、削除された。



ヘイトスピーチ対策は、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いで、規制することに抵抗を示す声もある。吉村市長は会見で、審査会のメンバーについて「表現の自由にかかわる大事な条例なので、憲法、法律にも造形の深い方、社会的ないろいろな事象について造詣の深い専門家、そういった方々になっていただきたい」と話している。



ヘイトスピーチ対策に取り組んできた弁護士は、大阪市の条例をどう評価するのだろうか。神原元弁護士に聞いた。



●「表現の自由」への配慮は?


「ヘイトスピーチについては、表現の自由との関係で、規制の可否が永らく議論されてきました。今回の大阪市の条例は、議論の膠着状態を打ち破って『とにかくやれることをやってみよう』と一歩を踏み出した点で、非常に意味のあるものだと思っています。



大阪市の条例は、 ヘイトスピーチの要件を『社会からの排除等といった目的性』、『侮蔑・誹謗中傷といった態様面』、『不特定多数の者が表現内容を知り得るといった対象者の不特定性』などと厳しく限定しています。



また、認定にあたって学識経験者の意見を聞くことにする等、手続き的にも慎重にしていることが、この条例の特徴だといえます。



これらは、表現の自由にも十分に配慮したものといえるでしょう。



条例が定めるヘイトスピーチの要件が限定的なものであったとしても、この条例は、ヘイトスピーチの根絶を願う立場から十分に評価できるものです。なにより『ヘイトスピーチは違法であり、これを規制できるのだ』ということを公に宣言すること自体、非常に画期的であり、インパクトがあることだからです。



このように、ヘイトスピーチについては、まず自治体で規制の実績を作っていき、最終的には、国の法律で全国的な規制を定めていく、という方向がよいかもしれません」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
神原 元(かんばら・はじめ)弁護士
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、2000年に弁護士登録、2010年武蔵小杉合同法律事務所開所。2013年3月にはジャーナリスト・有田芳生氏とともに東京都公安委員会に在特会のデモに関する申し入れを行った。
事務所名:武蔵小杉合同法律事務所
事務所URL:http://www.mklo.org/


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