政府批判の本を売った書店員が失踪? 表現が自由じゃない国はこんなにあった

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2016年02月17日 18:02  新刊JP

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『検閲―原爆報道はどう禁じられたのか』(モニカ・ブラウ著、時事通信出版局刊)は原爆についての検閲に迫る一冊。
「検閲」と聞くとなにやら物々しい雰囲気を感じますよね。

検閲とは公権力が表現物や言論について検査を行い、不都合や不利益を与えるものについて差し止めをする行為のことですが、今の日本では憲法第21条第2項で禁止されており、表現の自由が保障されています。こうして、私たちがいつでも本を楽しめるのも、本を通してあらゆる思想や考え方に触れることができるのです。

ところが、海外に目を向けてみると、公権力が検閲を行っている国は意外と多いことがわかります。ここでは出版物に対して検閲を行っている国の一部を取り上げていきます。

■イラン 電子書籍が検閲を有名無実化する?

イランは出版物の規制が厳しい国の一つですが、最近、電子書籍端末が流通し始め、出版許可が降りていない書籍がネット上で入手できるようになっていると「産経フォト」が報じています(*1)。その記事の中では、普及が進むことによって検閲が有名無実化するのでは、というユーザーの期待も書かれています。電子書籍は「検閲」の壁を崩すことができるのでしょうか。

■中国 政府批判の本を売った書店員が失踪?

また、よく知られたところでは、お隣の大国・中国も検閲が厳しい国。国務院直属の国家新聞出版広電総局が出版物を統制しており、発行禁止リストを作成しています。その中には、「反体制の政治的な書物」も含まれているようです。昨年10月から中国共産党を批判する書籍を扱っていた香港の書店「銅鑼湾書店」の関係者が相次いで失踪。中国の治安当局によって拘束されているという見方もあり、市民団体によるデモが起きる事態にまで発展しています。



■ベトナム 海外の名著のタイトルが変わる事態に

親日国といわれるベトナムですが、社会主義国家ゆえに出版物に対する規制も厳しいようです。AFPが報じたところでは、ベトナムの出版社が、アレクシ・ド・トクヴィルの著作で“民主主義の歴史の教科書”ともいわれる名著『アメリカのデモクラシー』の出版を計画していたものの、「デモクラシー」という言葉を当局が嫌がり、タイトルを差し替えたとか。(*2)

■インドネシア 1997年まで厳しい規制敷かれる

インドネシアでは1997年のスハルト政権崩壊直前まで、出版に対する規制が厳しく敷かれていました。ノーベル賞候補にもあがったインドネシアを代表する作家、プラムディア・アナンタ・トゥルの作品は、『人間の大地』など計36タイトルが発売禁止に。マルクス主義やイスラーム主義批判への弾圧が強かったといいます。その後の1999年に報道法が公布され、表現や出版の自由が認められました。(*3)



◆日本にもかつて検閲はあった

日本における出版物の検閲はありました。現代から近い時代でいえば、1945年に第二次世界大戦が終わった後、GHQが行った「プレスコード」。規制の対象になった出版物の中には、広島・長崎における原爆被害を伝える作品もあったといい、それが原爆被害の実態があまり公にされていない一因であるといわれています。

「表現の自由」は尊重されるべきものであり、私たちが自由に考えたり、発想したりしたことを外に出していく上で、必要不可欠なものです。しかし、そうではない国もあるというのも事実。その中で最初に挙げたイランのような、電子書籍が表現の自由をもたらす可能性があるという事例は、電子書籍の可能性を感じる一例ではないでしょうか。

(新刊JP編集部)

《参考文献》
*1 電子書籍で検閲回避 イラン、「自由」に注目(産経フォト)
http://www.sankei.com/photo/story/news/160215/sty1602150012-n1.html
*2 社会主義国ベトナム 西洋哲学書の出版に立ちはだかる壁(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/2755986
*3 「インドネシアの出版、書店、図書館」(国立国会図書館 リサーチナビ)
https://rnavi.ndl.go.jp/asia/entry/bulletin6-3-2.php

このニュースに関するつぶやき

  • 共産主義者を自称する者の排他的思想は人間にとって害虫みたいなもの。そうした方々は是非より高尚な北朝鮮や中共に行って欲しいものです。w
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