ポリオウイルス 感染経路の広がり予想できず
千葉県立佐原病院小児科部長の松山剛先生いわゆる「小児麻痺」として知られるポリオ。一度発症してしまうと、現在の医学では完治しない病気です。子どもをポリオから守る唯一の方法はワクチン接種による感染予防であり、今もなお、世界中でワクチン接種が続けられています。
国内には現在、ポリオウイルスの感染患者はいないとされていますが、過去5年を見ると、中国やラオスで感染が確認されており、パキスタンやアフガニスタンでは、ポリオウイルスが駆除されていません。近年、訪日外国人は増加が続いており、感染経路の広がりは予想がつかない状況です。いつ海外からポリオウイルスが国内に持ち込まれるかわかりません。
世界保健機関(WHO)は、ポリオの感染者が世界中に増加し、国境を越えて感染が広がったケースもあるとして、注意を呼び掛けています。このように感染予防の一層の強化が求められる中、サノフィ株式会社は2月18日、都内でプレスセミナーを開催。千葉県立佐原病院小児科部長の松山剛先生が講演を行いました。
「大人まで抗体の維持を」 2回目の追加接種の意義を強調
日本では、予防接種法により、「不活性ポリオワクチン(IPV)」の定期接種として、通常1歳半から2歳ごろまでに初回接種3回、追加接種1回が必要ですが、2回目の追加接種は任意となっています。これについて、松山先生は、接種から時間が経つと、「抗体価」(感染を予防する力を数値で表したもの)が低下する、と説明。しかし、「2回目の追加接種により再度上昇させられます」と強調しました。
その時期としては、米国では4〜6歳、フランスでは5〜7歳など、世界中の多くの国で4歳以降に追加接種が実施されており、米国疾病管理予防センター(CDC)でも、4歳前の接種回数によらず、4歳またはそれ以降に追加接種を受けることを強く推奨している、と紹介。日本の特徴として、小学校就学前に行われる予防接種は就学後の予防接種に比べて、接種率が高いというデータも示したうえで、「小学校に入る前に、MR(麻疹風疹混合)のワクチン接種と同じタイミングで受けることで、接種率が高くなるのでは」と提案しました。
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「世界からポリオが根絶されて、IPVが必要なくなる時代がきっと来る。しかし、それまではしっかりと抗体を維持し続けるということは重要」と松山先生。グローバル化が進むにつれ、「国内ではいないから大丈夫」が通用しない時代になってきているのかもしれません。(QLife編集部)
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