ネットでの「炎上」 企業の広報担当はドコに注意すべき?

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2016年02月29日 20:02  新刊JP

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『売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』(集英社刊)
「売らずに売る」という言葉に矛盾を感じる人は少なくないだろう。

 しかし、現代のプロモーション戦略を考えたときに、この「売らずに売る」というのは一つの解をもたらす。小山田裕哉氏の『売らずに売る技術 高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』(集英社刊)は、買わせることに注力してしまいがちなプロモーションを異なるアプローチから捉え、ケーススタディとしてに提示する一冊だ。

 では、その内容とはどのようなものなのか? 小山田氏へのインタビュー後編をお伝えする。
(新刊JP編集部)

――インターネットを使ってうまくブランドイメージを作り上げられる企業に共通する点を教えて下さい。

小山田:押し付けがましくないこと、フレンドリーであること、ユーザーの声を無視しないこと、ネットを低コストでPRできるメディアと考えず本気で取り組むことがあげられますね。

――最近の事例では、Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグが子供たちのために巨額寄付を行うという報道が出たところ、最初は賛美を受けましたが後に批判の的となりました。どうしてこのようなケースが起きるのでしょうか。

小山田:わかりません(笑)。良い話を賛美する人もいれば、「何か裏があるに違いない」と思う人もいる。それ自体はソーシャルメディアが普及する前からあったことです。特にお金持ちの慈善事業については、疑いの目を持つ人は必ずいるでしょう。

ザッカーバーグの本当の目的は私にはわかりません。ただ、炎上したとき、すぐにザッカーバーグが自分の言葉で「節税対策ではない」ときっぱり否定したことは、企業のクレーム対策として学ぶべきところがあると思います。

ソーシャルメディアは企業が宣伝するためのツールではなく、人と人がつながるためのツールです。だから不都合な何かが起こったときに、「目下確認中です」のような「組織のロジック」で話してしまうと、火に油を注ぐような結果になってしまいます。プライベートな集まりで、企業の名刺を配りまくるようなものだからです。

企業の代表として当たり障りのないことを言うのではなく、一人の個人としてきっぱり立場を表明する。そうすれば、徐々にその態度に賛同する人も現れ始め、「否定派も賛成派もいる」という健全な世論になっていきます。

――炎上しないように企業が気を付けるべきポイントを教えて下さい。

小山田:「炎上しない」ためには、不祥事を起こさない。それに加えて、宣伝を押し付けない。つまり、ネットでは「ユーザーと企業は対等」なのだと心に留めておき、「自分たちがブームを先導する」なんて意識で接してはならない。

とはいえ、不足の事態で炎上することもあります。そうなったときには、とにかく偉そうにしないこと、説明に組織のロジックを持ち込まないこと、早い段階で自社の立場をはっきりと説明しておくこと。これらが重要です。

――「売らずに売る」というのは現代のプロモーション戦略を考える上で大きなキーワードの一つだと思いますが、その感覚をつかむのは非常に難しいと思います。これまでの歴史を振り返って(一時代前で)「売らずに売る」を実践し、成功している企業はあるのでしょうか。

小山田:ジョブズ復帰以降のアップルです。もちろん、営業活動が皆無だとはいいません。しかしアップルがあれだけ成功できたのは、彼らが提供するブランドの世界観に多くの人があこがれ、自分もその一部に加わりたいと思わせたからなのは間違いないでしょう。

――この変化が速い時代において、今後も生き残っていく上で企業が大事にすべきものはなんだと思いますか?

小山田:それが「売らずに売る技術」です(笑)。

――本書をどのような方に読んでほしいですか?

小山田:もちろん、あらゆるビジネスパーソンですが、個人的に手にとってもらいたいと思っているのは、全国の中小企業の方々です。これからの日本企業が生き残っていくためには、「少ない商品を高く売る」戦略が不可欠です。技術力にせよ、サービスの水準にせよ、国際的に比較しても、まだまだ日本各地の中小企業のレベルは高い。それを最大限に活かす知恵として、「売らずに売る技術」を参考にしてもらいたいと思っています。

(了)

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