高級ブランドに見る接客の「妙」 なぜ高額でも売れるのか?

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2016年03月07日 19:42  新刊JP

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『ハイブランド企業に学ぶ 仕事が変わる「感性」の磨き方』著者の大串亜由美さん
カルティエやエルメス、グッチ、シャネル、ティファニー。ジュエリーならヴァン クリーフ&アーぺル、時計ならばピアジェ。いつの時代も、ハイ(高級)ブランドは人の心をつかみ続けています。

こうした高級ブランドを支えているのが、接客です。財布の紐が固くなっている現代において、ラグジュアリーブランドが顧客から愛され続けている秘密は、「サービス」にあるといえるはず。

一流ブランドのビジネスコミュニケーションの秘密を解き明かした『ハイブランド企業に学ぶ 仕事が変わる「感性」の磨き方』(PHP研究所刊)の著者である大串亜由美さんに、お話をうかがいました。
(新刊JP編集部)


■雑誌に書かれていた「10年に一度の好機」で転職?

――大串さんはもともと日本ヒューレット・パッカードの人事部門にいらっしゃったそうですね。

大串:そうです。採用や教育、海外派遣業務や社内コミュニケーションの業務をしていました。2年弱ですが、アメリカでの勤務も経験しています。

――その後に独立されたのですか?

大串:その前に小さいコンサルティング会社を経ています。

――独立された経緯は?

大串:『an・an』の星占いを見ていたら、10年に一度の好機だと書かれていた…というのは後付けで(笑)、日本ヒューレット・パッカード時代の上司から「こういう仕事をしてみたら?」と勧められたんですよ。

――そこから株式会社グローバリンクを立ち上げられたんですね。今のメインのお仕事は、ラグジュアリー業界向けの人材育成コンサルティングということになるのですか?

大串:ラグジュアリー業界だけではありません。ビジネスコミュニケーションが切り口になるので、プレゼンテーションや会議の進め方、傾聴力、交渉力、正しい自己主張などをいろいろな企業で教えています。ただ、私自身がラグジュアリーブランドに興味があることもあって、その割合が高くなっているということですね。


■高級ブランドはコミュニケーションが違う

――ラグジュアリー業界、つまりカルティエやエルメス、グッチ、ティファニーなどの高級ブランドを扱うお店と一般的なお店の接客(サービス)の違いはどこにあると思いますか?

大串:ラグジュアリー業界の方が、自分の仕事の評価がより分かりやすいと思います。ラグジュアリー製品はそもそも高額でありながら、必需品ではないわけですから。なくなっても生きていけるものです。

だからこそ自分の腕が試されるわけで、相手のニーズを汲み取って感性をフル活用して、お客様に提案をする。それがあって初めてお客様に買っていただけるわけです。つまり、提案力が問われるわけですね。

――高級品だからこその買い方がある。

大串:お客様からしてみれば、憧れの商品ですし、買って失敗したくないんです。そこでしっかりと相手に合った提案ができるかがカギで、「高いものを買ってしまったな」と思わせてしまえば不合格です。逆に値段のことも忘れてしまうほど良い買い物をしたと思ってもらえれば一流の接客といえます。

そのレベルに辿りつくためには、お客様の日頃のライフスタイルなどに興味を示しながら、少しでも会話を広げられる準備をする必要があるんですね。

――それが本書でいうところの「感性」になるわけですね。

大串:そうです。音楽や美術、日本文化や一流のサービスに触れたり、その道のプロの話を聴いたりするなど、感性で受け止めるものに触れることで、その力は磨かれていきます。

ただ、もちろん感性だけが大事というわけではなくて、基礎的な部分ができているという大前提の基、「選ばれる自分」になるためのプラスアルファとして、自分の言葉で話せるか、相手への配慮がちゃんとできるかといった部分も大事になります。


■相手の話を聞くことが違いを生む

――本書にはお客様とのコミュニケーションのとり方のイロハが書かれています。特に興味深いのが、商品を売り込むのではなく、お客様をうまく乗せてあげるという点が強いということです。

大串:そうですね。お客様はそれぞれストーリーを持って、お店に足を運んでいます。

あるお客様がお母様の誕生日プレゼントを購入しに来店したとしましょう。「予算はおいくらですか」と、すぐに商品をすすめてしまうのではなく、よりコミュニケーションを取ることで、お母様の好みやライフスタイルを聞いたりすることで、より良い商品の提案ができるようになるはずです。

――相手が持っている背景を聞くと、いろいろなことを話してもらえますからね。

大串:相手にお話ししてもらうことが大事なんです。ところが、気づけば「これは○○のデザインで」「これは○○の素材で」など、一方的に話をしてしまう。でも、それはお客様がほしがっている情報なのですか? と言いたいです。

(後編に続く)

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