「始業前の仕事」医療従事者の7割が「時間外労働として請求せず」「請求しにくい」

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2016年03月07日 20:31  弁護士ドットコム

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医師や看護師などでつくる日本医療労働組合連合会(日本医労連)は3月7日、東京・霞が関の厚生労働省記者クラブで会見を開き、医療従事者の労働実態調査の結果を発表した。残業が常態化しているといい、担当者は「過重労働は働く者の命だけでなく、患者さんの安全にもかかわる問題だ」と労働環境の改善を訴えた。


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●「労働時間の上限規制の法制化を」


労働実態調査は毎年行っている。今回は昨年10〜12月にかけ、日本医労連に加盟している労働組合の組合員ら約1万2500人を調べた。回答者の半数が看護職で、リハビリなどの医療技術職が約30%、医師は3.9%だった。



調査結果によると、6割近くの医療従事者が患者の情報収集や薬の準備などで、始業前に1時間以内の仕事をしているという。終業後についても、約7割が残業。1時間以内が多数だが、1〜2時間の残業をする人も全体の16.2%いた。



医療従事者の残業時間そのものは、他の業種と比べ決して長いとは言えない。しかし、人によっては看護師を中心に深夜勤務があり、日勤から夜勤の場合、残業があるとほとんど休息をとれない可能性もある。



例えば、くも膜下出血で死亡し、2008年に労災認定を受けた看護師の場合、時間外労働時間は「過労死ライン」と呼ばれる月80時間より短い約52時間だった。しかし、月5回ほどの夜勤の日は20時間近くの連続勤務になっていたという。



会見で、日本医労連の三浦宜子書記長は「(労働時間の)上限規制と、(日勤と夜勤の)インターバル規制を法制化してもらいたい」と訴えた。



●未払い残業代は平均「月6万6000円」以上


調査では、医療従事者があまり残業代を申請していないことも分かった。始業前に仕事をしていると答えた人のうち7割以上が「時間外労働として請求していない」と回答。終業後の残業については約3割が全額を請求していると答えたが、4割近くが「一部請求している」に留まり、「していない」人も2割強いた。



請求しない理由については、25.3%が「請求できない雰囲気がある」、10%が「請求できると思わなかった」としている。日本医労連の試算によると、医療従事者の未払い残業代は、平均で月6万6000円以上になるという。




三浦書記長は「お金の問題もだが、未払いをずっと認めていると、職場の人員不足が覆い隠されてしまう。過重労働は、働く者の命だけでなく、患者さんの安全にもかかわる問題だ」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)


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  • 365日24時間体制で夜勤の多くある医療や介護労働者を日中勤務が中心の労働者と同じような基準で労働規制すること自体が間違い。EUでは夜勤労働のある労働者の総労働時間は他の労働者と区別して設定されていると聞く。
    • イイネ!22
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