父が「愛人とは別れない」宣言…愛人への「生前贈与」をやめさせる方法は?

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2016年03月09日 11:42  弁護士ドットコム

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「愛人に財産をすべて渡そうと考えている」。不倫の恋に狂った夫が、ある日そんなことを言い出したら、妻はどうすればいいのでしょうか。百歩譲って不倫は目をつぶるとしても、財産が愛人の手に渡ることは許せない。そうした時、どんな対策をとればいいのか、相続の問題に詳しい須山幸一郎弁護士にお話をききました。



Q. 愛人に遺産が渡らないようにするためには?


父に愛人がいます。当人たちは開き直って「別れることは無い」と言い張っています。


父方の祖父が他界して、祖父の遺産が父に相続されているのですが、私の母は、生前祖父の面倒をずっと見てきました。そのため、2人の関係が続くことは仕方が無いとしても、その遺産が万が一にも愛人に渡ってしまうことを心配しています。


父が生前に愛人に財産を渡すなどした場合、取り返すことは可能なのでしょうか。


A.  愛人に財産を残せる可能性がある


相談者のお父さんが、愛人に財産を残すために取る方法としては「贈与」と「遺贈」が考えられます。


「贈与」とは、生前に契約によって相手に財産を譲ること、「遺贈」とは、遺言によって財産を譲ることをいいます。贈与は契約の一種で、お父さんは愛人の女性と贈与契約を結ぶ必要があります。一方で、遺言というとは、単独行為といって、お父さんが一方的にできることが特徴です。


「不倫相手に対する贈与や遺贈なんて公序良俗に反しているから無効だ!」と考える人も少なく無いでしょう。ですが、実務では、必ずしもそのような考え方は取られていません。


男性が不倫相手の女性に財産の一定割合を遺贈する内容の遺言を残していた事案について、最高裁は、贈与や遺贈がされる「目的」を重視して、一定の場合には遺贈を有効にするという判断を示しています。おおまかに言えば、次のような判断基準を示しています。


(1)もっぱら不倫関係を維持継続することが目的でした遺贈は無効。


(2)不倫であっても、相手の女性の生活を保全する目的でされた遺贈で、遺言の内容が妻子など相続人の生活の基盤を脅かすものでないときは有効となる余地があり。


この考え方は、贈与にも同様に適用されると思われます。目的によっては、お父さんは愛人に財産を残せる可能性があります。


贈与、遺贈自体は、家族の関与がなくてもお父さんが勝手に行うことが出来ます。相談者としては、これを事前に阻止することは困難でしょう。したがって、これらが発覚した場合に、事後的に贈与、遺贈が無効だということを主張していくことになるでしょう。


まず家族としては、お父さんとよく話し合い、そのような遺贈・贈与等を行わないように求めることが大事でしょう。


不倫相手の所在が分かっているのであれば、不倫相手に対し、『夫との不倫関係の解消』、『慰謝料請求』、『贈与を受けた財産に対する返還請求の予告』を内容とする内容証明郵便を送付し、夫から贈与を受けないように求めておくことが考えられます。


仮に遺贈が有効とされた場合であっても、お母さんは、離婚さえしていなければ、遺留分に相当する額は取り戻すことができます。お父さんが離婚届を勝手に提出しないよう、離婚届の不受理申出をしておくことも重要です。




【取材協力弁護士】
須山 幸一郎(すやま・こういちろう)弁護士
2002年弁護士登録。兵庫県弁護士会。神戸家裁非常勤裁判官(家事調停官)。三宮の旧居留地に事務所を構え、主に一般市民の方を対象に、法律相談(離婚・男女問題、相続・遺言・遺産分割、借金問題・債務整理等)を行っている。
事務所名:かがやき法律事務所
事務所URL:http://www.kagayaki-law.jp/


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