「難民をトルコに強制送還」案にEUで異論噴出 トルコに対する警戒心も

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2016年03月18日 14:41  ニューズウィーク日本版

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 EUは今週、ヨーロッパに流入する難民を一旦トルコに強制送還する対策案について首脳会議で合意した。しかし28の加盟国のうち少なくとも5カ国からは異論が出ている。


 首脳会議では2日目の18日に、EUからトルコに対策案を示して最終合意を目指す。


 今回合意したこの対策案は、EUに入国するシリア難民や移民を一旦トルコに強制的に送還するもの。難民や移民はトルコで審査を受け、一部がヨーロッパへの入国を許可されることになる。


【参考記事】モノ扱いされる難民の経済原理


 見返りとしてトルコは、広範な譲歩をEUに求めている。最大670億ドルの援助、ヨーロッパ旅行の際のビザ免除、EU加盟協議の促進といった項目があがっている。


 しかし、ヨーロッパへの難民や移民の流入を食い止めるためのこの対策案について、少なくとも5つの加盟国からは異論が噴出した。


 まず懸念を表明したのはハンガリー。今月7日、オルバン首相は合意を拒否する可能性を示唆していた。ハンガリーの政府関係者は今週、本誌の取材に対し、オルバンは加盟国への移民の割り当てを含む合意は受け入れないだろう、と話していた。オルバンは、現行のEUの移民割り当てにも反対してきた。


 EUのドナルド・トゥスク大統領は今週、ブルガリアも問題を抱えていることをほのめかした。トゥスクは、「トルコからEU加盟国への抜け道としてブルガリアを通るルートもある」と言及した。最終案の合意では、この点でも対処する必要があると、トゥスクは強調している。


【参考記事】欧州難民危機で、スロバキアがイスラム難民の受け入れを拒否


 スペインのラホイ首相は、合意に際して、ギリシャで審査を受けた移民だけをトルコに送還するよう求めると見られる。今週スペイン議会では、入国した難民や移民をすべてトルコに送還することが合法かどうかの議論があった。


 キプロスは、トルコのEU加盟協議を再開する合意は認めないことを表明している。キプロスはトルコの軍事介入により北キプロスが独立、分断国家になった。トルコはキプロスを国家として承認せず、キプロス船舶がトルコに寄港することも拒否しているため、加盟協議の凍結を主張している。


 フランスのオランド首相は先週報道陣に対して、人権問題やビザ免除の基準に関して「トルコに対して譲歩はできない」と語った。


 一方で人権団体や国連からは、難民を強制送還する今回の合意が国際法上合法かどうか疑念の声が上がっている。



ジョシュ・ロウ


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