限定公開( 2 )
今後の社会と産業の鍵を握る技術のひとつであるドローンだが、空ばかりでなく海での活用も進められている。先日、画期的な“ドローン潜水艦”が公開された。
■ボーイングの画期的な“ドローン潜水艦”
ボーイングといえば、旅客機の製造で有名な世界最大の航空機メーカーだが、実は1960年代から潜水艦の開発を行なっていることはあまり知られていない。そのボーイングから先日、自律航行をする画期的な“ドローン潜水艦”がまもなく実用化されることが発表された。
この最新鋭の無人潜水艦はサイズ面で3つのラインナップがあり、全長15.5mの最も高性能な舟艇が「Echo Voyager」である。さらに全長9.8mの「Echo Seeker」と、全長5.5mと最も小型の「Echo Ranger」が準備されている。
これら艦艇のいったい何が“画期的”なのか? 最も著しく向上した性能が、一度の出航で数カ月間の航行が可能であるという、長い航続性能だ。これまでの無人潜水艦はせいぜい2、3日間の連続航行しかできなかったことに較べれば、飛躍的な向上を遂げたことになる。この長い航続性能によって、様々な用途への運用が可能になる。
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また、これまでの無人潜水艦は入水や回収の際に、専用の船舶を使って作業を行なっていたが、この「Echo Voyager」シリーズは一般の港湾から出航し、帰港することができるため運用コストが大幅にカットできるのだ。
主な用途としては学術研究や各種の海洋リサーチ、あるいは沿岸警備や軍事での偵察や哨戒活動への活用が、まずは想定されている。収集したデータはいったん船体を海水面に浮上させ、内臓アンテナを伸ばして送信することもできる。運用期間が数ヵ月にも及んだ際でも、収集したデータをある一定の周期(もちろんプログラム可能)で送信させて逐一受け取ることができるのだ。
飛躍的に長くなった航続性能と運用の低コスト化で、様々な分野での活用が期待されるこの「Echo Voyager」だが、試作機はほぼ完成に近づいておりこの夏、カリフォルニア沿岸でテスト航行が行なわれる予定だ。この最新鋭の“ドローン潜水艦”がどのように海を変えるのか注目が集まる。
■潜水艦を発見&追尾する“ドローン対潜哨戒艦”も登場
ボーイングから近いうちに登場するこの最新鋭の無人潜水艦の一方で、やはり“矛”が進化すれば“盾”の性能も向上するのが常のようだ。DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)からは、潜水艦を自動追跡する無人の対潜哨戒艦「ACTUV(Anti-Submarine Warfare Continuous Trail Unmanned Vessel)」が、なんとこの4月にも進水するという。
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このACTUVは静謐性の高いディーゼル・エレクトリック方式の動力で潜航する潜水艦を、自動的に何千キロも追跡できる性能を備えている。ACTUVの全長は約40m、重さ約40トンで今のところはあくまでも哨戒活動のみでの運用が想定されているため武装はしていない。
数千kmの連続航続距離を誇るということは、期間にして数カ月にわたる作戦行動が可能ということであり、これまでの海軍による対潜哨戒活動を大幅に省コスト化することが可能になる。特に乗組員が全く必要ないことは、今後の米海軍にとって計り知れない利益をもたらすに違いない。
これまではCGでしかACTUVの外観を確認できなかったが、先頃、情報サイトの「Foxtrot Alpha」で船体を撮影した写真が公表されている。これまでドローンといえば米空軍の専売特許だったが、米海軍でも今後急速に“ドローン化”が進んでいきそうだ。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・Gizmag
http://www.gizmag.com/boeing-echo-voyager/42272/
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・DARPA
http://www.darpa.mil/program/anti-submarine-warfare-continuous-trail-unmanned-vessel
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