“猫の手も借りたい”という言葉があるくらいだから、なにかを手作業でやっているとき「ああ、もう1本腕があったら!」と思うこともあるだろう。
でも、いずれはそんな無茶な願いが現実になるかもしれない。ロボットアームの出現によって。
ジョージア工科大学の研究チームが、自律演奏までしてしまうドラマー用の“3本目の腕”を開発したのだ。同大学のウェブサイトで紹介されている。
音楽に合わせて自律演奏する
開発したのは、Gil Weinberg教授をはじめとする研究チームだ。
ロボット義手の長さは約2フィート(60cm)。ドラマーの肩に装着する。そうすると使用者のジェスチャー、そして聞こえてくる音楽に合わせて、自律的に演奏をするのだ。
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例えば、ドラマーがハイハットを叩けば、ロボットアームはライドシンバルを叩くように移動し、ドラマーがスネアドラムを叩けば、ロボットアームはタムに移動するといったことが可能だ。
「3本目の腕は、技巧的でかつ洗練された演奏を可能にすることで、他の方法では得られないような、豊かでクリエイティブな経験を与えてくれます」とWeinberg教授はいう。
このロボットアームは、音楽を聴き、そのビート、リズムにあわせて自律的に演奏することができる。ミュージシャンがテンポを落とせば、ロボットアームもそれに合わせてテンポを落とす。テンポを上げれば、アームもテンポを上げる。
また、ドラマーがどこに座ってもどこに楽器があるかを把握し、人間の手がどこにあってどちらへ向かっているのかを把握し、自分自身も楽器への距離と方向を把握して、そちらに手を伸ばす。しかも、ちゃんとプレイする楽器の表面に、スティックの角度を合わせて構えることができる。
下の動画では、その様子を見ることができる。
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音楽以外への応用への期待も
実は、Weinberg教授らは約2年前に片腕のドラマーのためのロボットアームを製作している。下の動画『Robotic Drumming Prosthesis – YouTube』が、その様子だ。
今度は、それを発展させて、誰もが装着できて、“サイボーグ・ドラマー”になれる3本目の腕という形で開発したのだ。
「自分の身体の一部にできるロボット機器を使うというのは、自分の横にロボットがいるのとはまったく異なる感覚になります。
この機器は使用者の身体の動きを学んで、それを補助、補完していくことで、使用者の身体の一部になるのです」とWeinberg教授は語る。
次のステップとして、研究チームはロボットアームを脳でコントロールしたいと思っている。既に、脳波を測定するヘッドバンドを使用して、ドラマーの脳の働きを読み取ろうという実験を開始している。
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ドラマーがテンポや楽器を変えようと考えただけで、アームが反応できるようにしていきたいのだ。
この技術の応用は、楽器演奏だけにとどまらない。例えば、外科医が3本目の腕を使って次に使用する器具を取ったり、技術者が修理や実験の際に3本目の腕を使うことも考えられる。
ロボット技術というのは、完全に単独で作動するものだけでなく、このように身体の機能を拡張する機器としても今後は普及していくことになるのかもしれない。
【参考・画像】
【動画】
※ Robot allows musicians to become three-armed drummers – YouTube
※ Robotic Drumming Prosthesis – YouTube