レンガは、メソポタミア文明の時代から利用されている建築材料。
その生産量は、アジア地域だけで、1年間に1.2兆個にのぼり、原材料である粘土を高温で焼成する工程で、およそ8億トンもの二酸化炭素を排出している。
サンゴ礁から着想を得た、エコロジーなレンガ
米ノースカロライナ州を拠点とし、2012年に創設されたスタートアップ『bioMASON』は、サンゴ礁の形成プロセスから着想を得て、従来の焼成によらず、細菌と砂からレンガを生成することに成功した。
サンゴは、内部の細菌がもたらすpH(水素イオン濃度指数)の変化によって、結晶化する。
そこで、『bioMASON』は、このサンゴの生物学的機能を模倣。砂を型に入れ、細菌を注入し、細菌の養分となるカルシウムイオンが含まれた水を与えると、結晶化がすすみ、5日程度で、十分な強度を持つレンガが生成できるという。
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結晶化をもたらした細菌は、養分や水を断つと、やがて死滅し、一連の生成プロセスで使用した水は、再利用される仕組みだ。
「レンガの地産地消」が可能に
『bioMASON』のレンガの特徴は、生成プロセスにおいて燃料を必要としない点。燃料コストを削減し、環境負荷を軽減することができる。
また、水やカルシウムイオンなど、このレンガの生成に必要なものは、場所を選ばず、どこでも調達できるため、“建築材料の地産地消”が実現できるのも利点といえるだろう。
『bioMASON』の研究成果は、エコマテリアル業界や建築業界などから高く評価され、2013年12月には、持続可能性に優れた建築材料を表彰する『Cradle to Cradle Product Innovation Challenge』で、最優秀賞に選ばれている。
レンガを「栽培」する時代が到来か?
米国では、地球温暖化防止や環境保護などの観点から、持続可能性の高い建築材料へのニーズが、年々、増加傾向にある。
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米調査会社IBISWorldによると、2011年から2016年までに、年間成長率17.0%で拡大し、2690億ドル規模の市場に成長した。
『bioMASON』は、2014年には、地元ノースカロライナ州立大学とも提携し、独自のバイオセメント技術の発展に向けて、継続的に取り組んでいる。
『bioMASON』の技術がさらに進化し広く普及すれば、近い将来、農作物を育てるように、レンガも、水と養分で“栽培”する時代が、到来するかもしれない。
【参考・画像】
※ bioMASON
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※ Sustainable Building Material Manufacturing in the US: Market Research Report – IBISWorld