「時給換算したら500円もないくらいで働いていました」。都内のITベンチャーで有給のインターン生として週4日程度働いていた大学生のT君は、当時の過酷な労働環境を振り返る。インターン先の企業からは、日給として、1日およそ5000円を定額支給されていたが、大幅な残業があったため、時給で考えるとかなりの低賃金だったそうだ。
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「始業は朝10時、一応定時は18時なのですが、その時間に帰れる空気では全然ありませんでした。自宅に帰り着くのが0時を過ぎていた事もありました。仲間内では『時給換算したら相当こき使われてるよね』なんて話してましたね」
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T君のように、残業代を支払わずに定額支給することに問題はないのだろうか。もし、そのような状況になったら、どのような行動を取ればいいのだろうか。岩城穣弁護士に聞いた。
「誤解されていることもあるようですが、インターンシップ生が労働基準法上の『労働者』と認められる場合は、労働基準法や最低賃金法、労災保険法などの労働法令の適用を受けます」
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どのような場合、「労働者」と認められるのか。
「厚生労働省が通達で、次のような基準を示し、(1)(2)いずれにもあてはまる場合には労働者に該当するとしています(平成9年9月28日基発636号)
(1)直接生産活動に従事するなど、当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属している
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(2)事業場と学生との間に使用従属関係が認められる」
T君のケースは、この基準にあてはまるのか。
「今回のケースでは、『都内のITベンチャーで有給のインターン生として週4日程度働いていた』、『過酷な労働環境』で『こき使われていた』という事情からすると、(1)(2)の基準は満たしていると考えられます。そうすると、最低賃金法の適用があります。
T君の場合、朝10時始業、18時終業で昼休み休憩が1時間とすると、所定労働時間は7時間ということになります。1日5000円の定額支給を時給換算すると時給715円となり、これは東京都の最低賃金は907円(平成27年10月1日発効)を大きく下回っており、明らかに違法です。
これに加えて、残業代を支払わずに深夜まで働かせるのは、さらに違法です。仮に夜10時まで残業させられたとすると、労働時間は11時間となり、時給は454円となってしまいます」
T君は法的な手段をとることができるのか。
「T君がある日4時間の残業をしたとすると、1日の所定内賃金は、法的には次のように算出されます。
最低賃金 6349円 = 907円 × 7時間
割増賃金(25%増し)4535円 = 907円 × 1.25 × 4
この合計10884円が支払われるべき賃金ですから、実際に支払われた5000円との差額、5884円を請求できることになります。
T君が取るべき行動としては、(1)その企業を管轄する労働基準監督署に申告し、違法な労働を改善させ、賃金の不足分を支払わせること、(2)所属する大学に連絡し、大学からそのような違法な働かせ方をやめさせるよう要請してもらうことが考えられます。
いずれも勇気のいることですが、インターン生にこのような違法労働をさせる会社は、社員にも違法労働をさせている可能性が高いと思われます。このような企業には就職しないことが賢明です」
岩城弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岩城 穣(いわき・ゆたか)弁護士
1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」。
事務所名:いわき総合法律事務所
事務所URL:http://www.iwakilaw.com
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