恋した人は「人妻」だった…肉体関係がなくても映画&焼肉デートは「不倫」なの?

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2016年04月16日 08:12  弁護士ドットコム

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その日の夕刻、上司に命じられた急な仕事を毅然と断り、孝彦さん(33)は急ぎ、六本木ヒルズの映画館を目指していた。「19時30分から始まるチケットを予約しておいたから、絶対に遅れちゃダメだよ」。優希さん(29)からのLINEに「OK。もう会社を出た」と返し、彼女の好物のシナモンロールを購入して、待ち合わせ場所に到着した。


遅れてやってきた優希さんの「嬉しい〜」という言葉を聞けるなら、並んだ甲斐があったというもの。遠目にもわかる色の白さと、大学時代のラクロスで鍛え上げたスタイルの良さ、そして手入れの行き届いたツヤのあるミディアムレングスのヘアスタイルの優希は、美女が行き交う六本木でも人目を奪う。


この日の映画は『スポットライト』。同じメディア業界で働く2人にとっては、映画で描かれる世界は遠い話でもない。2人で顔を見合わせて、うなずくシーンも何度かあった。飲み物に手をのばした時、一瞬ふれあった優希さんの手の温もりにも胸の高鳴りを抑えきれなかったと告白する。


21時に映画館を後にした。六本木の夜が始まるのはこれからだ。孝彦さんが「麻布十番の焼肉屋を予約しておいたよ」というと、「さすがだね〜」と喜ぶ、肉好きの優希さんの反応は予想通りだ。映画の感想を語り合いながら、店まで歩いた10分ほど、あと少しで届きそうな優希さんの手を握りしめたい衝動に何度も駆られた。


孝彦さんには、どうしても踏み切れない理由がある。何故なら優希さんは、2週間前に結婚したばかりの人妻だから、だ。


仕事を通じて知り合い、同じ名門K大学出身という共通点から、意気投合した2人。定期的に連絡をとりあい、映画や食事に行く仲だった。優希さんに言い寄る男はたえず、その何人かとは深い仲になっていたようだ。ただ「なんか飽きちゃって」と言っては別れ、ヒマができると呼び出す相手は常に孝彦さんだった。


知り合って5年間、なにもなかったが、優希さんの結婚が決まると、孝彦さんは「ひょっとしたら、僕は彼女に恋をしているのかもしれない」と、ふと思うようになっていた。


しかし結婚式で、優希さんの幸せそうな笑顔をみてから、その思いにはフタをしてきたという。本当はその日の映画デートも、「ただのお友達」としての関係のつもりだったが、実際には優希さんにもっと近づきたい気持ちを再確認する時間になってしまったという。


この日も、はた目からみれば、カップルそのものだったはずだ。会社経営者の夫と暮らす赤坂のタワーマンションへと送るタクシーの車内でも、孝彦さんの手を握りしめ、「またこうしたいな〜」と潤んだ瞳で見上げる彼女を、誰が人妻と思っただろうか。


孝彦さんは「優希さんの幸せを壊すつもりはありません。でも、定期的に2人で会うような関係を継続したいと思っているんですが、彼女の夫にバレたら、不倫になってしまうのでしょうか? 以前『2人で会っても大丈夫なのかな?』と聞いたら、彼女は『全然問題ないよー。ただの友達なんだし』と言っていました。僕の気持ちに気づいていないから言えることなのでしょうけど・・・」。


この話は実話をもとに創作したストーリーですが、秘めた恋の相手は人妻。肉体関係を持たないなら、人妻との「デート」は法的な問題はないのでしょうか? 佐田 理恵弁護士にお話をうかがいました。



● ポイント1:法的にダメな「浮気」の内容


結論から言えば、今回のケースで、法的な問題はありません。


どこからが浮気なのか、どこまで許せるのかという議論があります。「好意を抱く」「2人きりで食事をする」「手をつなぐ」「キスをする」「肉体関係をもつ」など、人それぞれ考え方が違います。


ただ、道義的なことはともかく、法的に責任を負うかどうかについては、基準があります。パートナーが嫌だと思えば全て違法になるというわけではありません。


最も分かりやすい基準は、「不貞行為」に当たるかどうかということです。不貞行為を行えば、夫婦間では離婚理由になりますし、配偶者のある者と不貞行為をした者は、夫婦の一方に対して、不法行為責任を負うことになります。


では、「不貞行為」とは、どのような行為なのでしょうか? 不貞行為とは「配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と言われています。性的関係を結ばずに、単にデートをしただけ、食事をしただけでは、不貞行為ではありません。それゆえ、今回のケースは、不貞行為にはあたりません。



● ポイント2:肉体関係を結ばなくてもダメなことも


ただ、不貞行為にあたらなければ、何をやってもよいわけではありません。性的関係にまではいたらなくても、夫婦間の婚姻関係を破綻させる原因となる場合もありますし、その結果として、不法行為責任を負うこともあり得ます。


今回のように、孝彦さんの内心に不純な動機があったとしても、優希さんからすれば「友達として、一緒に映画を観て、食事をした」という程度なのでしょう。いずれにせよ、肉体関係を結んでいない現在の関係は、違法ではありません。


しかし、今後、何度も二人で会い、関係が親密になり、婚姻関係を破綻させるようなことがあれば、場合によっては違法性を帯びてくることもありますので、注意が必要です。


違法とまでならないにしても、相手の配偶者を巻き込むようなトラブルに発展する可能性もありますので、一定の距離を保ったほうがよいとは思います。




【取材協力弁護士】
佐田 理恵(さだ・りえ)弁護士
第二東京弁護士会所属 子供の権利に関する委員会委員

事務所名:アストレア法律事務所
事務所URL:http://www.astraea-law.jp/


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