世界各地の海岸から海へと流出したプラスチック廃棄物は、海洋環境を汚染し、海洋生態系に悪影響を及ぼす。
米ジョージア大学の研究結果では、海に流出したプラスチックの量が、2010年の1年間だけで、480万トンから1,270万トンにのぼると推計。
これらのプラスチックは、海中で細かく砕かれながら微細な粒子となり、その多くは、地球の自転によって、太平洋循環など、5つの亜熱帯海流に押し流され、やがて蓄積する。
米非営利団体『5GYRES』らの研究チームによると、25万トンものプラスチック廃棄物が、現在も海で漂流しているそうだ。
オランダのティーンエイジャーが発案した、画期的なアイデア
オランダ人の学生ボイヤン・スラット(Boyan Slat)氏は、2013年2月、当時18歳の若さで、『オーシャン・クリーンアップ基金(The Ocean Cleanup Foundation)』を創設。
|
|
フェンスを海面でV字型に浮かべ、風や海流に乗って移動するプラスチック廃棄物をその内側で集めて回収する、独自の海洋清掃システムを、開発してきた。
2013年5月には、クラウドファンディングを通じて、約9万ドル(約990万円)を調達し、科学者やエンジニアら、100名以上のボランティアも集まってきたという。
海にフェンスを張り、プラスチックごみを「待ち伏せ」
このシステムは、水面から3メートルほどの比較的浅い水域に滞留しやすいというプラスチックの性質を利用し、フェンスを細く設計しているのが特徴。
魚などの海洋生物を、フェンスの下からすり抜させることによって、誤って捕獲したり、損傷したりするリスクを軽減できる。
2014年に公表された事前調査レポートでは、「太平洋循環に100キロメートルのフェンスを10年間設置することで、42%にあたる7,000キロ分のプラスチックゴミを除去できる」と結論づけられた。
|
|
回収コストは、1キロあたり4.53ユーロ(約570円)と試算されており、船を使って網で回収する従来の方法よりもずっと効率的だ。
また、『オーシャン・クリーンアップ基金』は、2020年の実用化に向けて、2015年5月、長崎県対馬市と協定を締結。
2016年夏以降、長さ2キロメートルのフェンスからなるプラスチック除去システムを、対馬の沿岸水域に設置し、実証実験を行う計画がすすめられている。
海洋環境の保全に向けた、有望なイノベーション
海洋環境の保全には、プラスチック廃棄物を海洋に流入させないことが最も重要であることはいうまでもないが、すでに海洋に集積しているものをできるだけ早期に除去することも、同時に取り組むべき課題。
『オーシャン・クリーンアップ基金』が研究開発をすすめるフェンス式の海洋清掃システムは、大規模かつ効率的にプラスチック廃棄物を海から回収できる有望な手段として、世界中が期待を寄せている。
|
|
【参考・画像】
※ New Science paper calculates magnitude of plastic waste going into the ocean – The University of Georgia
※ Plastic Pollution in the World’s Oceans: More than 5 Trillion Plastic Pieces Weighing over 250,000 Tons Afloat at Sea