「身分証を貸して」チケット売却先からの依頼に困惑…他人の身分証で入ったら違法?

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2016年05月08日 11:02  弁護士ドットコム

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コンサートのチケットをネットの仲介サイトで売却する過程で、「身分証を貸してほしい」と頼まれ、困惑している人からの相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。


チケットの売買を約束した時点では、身分証明書の話はありませんでしたが、その後、コンサートの主催者が、入場には身分証明書が必要だとアナウンスしたため、買い手側から身分証明書の貸し出しの要望を受けたそうです。


相談者は「他人の身分証明書で、コンサート会場に入場することは、違法ではないのでしょうか」と心配しています。このような行為に違法性はあるのでしょうか。また、相談者は契約の破棄も検討していますが、身分証の件は契約を取り消す理由になるのでしょうか。正木健司弁護士に聞きました。



● 他人の身分証を使うと犯罪になる可能性も


他人の身分証明書を使ってコンサート会場に入場することは、人を欺いて不法に役務(サービス)の提供を受ける行為として、詐欺利得罪(刑法246条2項)などの刑法上の犯罪に該当する可能性があります。


コンサートチケットの売買自体は違法ではありませんが、身分証明書の貸し出しがなければコンサート会場に入場できないわけですから、不法な条件が付された契約であるといえます。民事上も全体として違法性を帯びます。


つまり、不法な条件が付された契約であり(民法132条)、また、公序良俗に違反する契約として(民法90条)、民法上無効となると考えられます。今回のケースでは、事前に身分証明書が必要だと知らなかったことから、錯誤による無効も主張しうるでしょう(民法95条)。


このように、相談者としては、身分証貸し出しが条件になった場合、契約は無効であるとして、これを破棄することができるでしょう。





【取材協力弁護士】
正木 健司(まさき・けんじ)弁護士
先物取引、証券取引、デリバティブ取引などの投資被害事件、金融商品取引訴訟を多数取り扱う。名古屋先物証券問題研究会事務局長。先物取引被害全国研究会幹事。全国証券問題研究会幹事。愛知大学法科大学院非常勤講師(消費者法)。中京大学法科大学院非常勤講師(消費者法)。愛知県弁護士会消費者委員会投資被害対策チーム長。K&A投資被害弁護団事務局長。
事務所名:名城法律事務所
事務所URL:http://www.meijo-law.jp/


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