熊本地震で募集の「義援金」、税控除を受けるための仕組みとは?

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2016年05月12日 12:02  弁護士ドットコム

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熊本地震の被災者支援に使われる義援金の募集が各自治体、団体で行われている。「義援金」は被災した住人に直接届けられるお金で、集まった義援金は自治体を通じて、平等に被災者に分配される。義援金を支払った人は税金の控除や損金算入の取り扱いを受けることができる。


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寄付金の税金控除とは、具体的にどのような仕組みなのだろうか。久乗哲税理士に聞いた。



●寄付先によって税控除や損金算入の扱いが変わる


「手続きは、所得税も法人税も確定申告で申告します。



ただ、最初にお伝えしておきますが、同じ寄付でも、税制の対象外の団体へ寄付した場合は、税金の控除は受けられないので気を付けてください。控除があるのは、国や地方公共団体、特定公益増進法人等に寄付した場合だけです。



その理由は、今の『寄附金』税制が創設された1942年という時代背景を見ればわかります。当時、第二次世界大戦の戦費調達のために国は躍起です。すべて寄附金を損金扱いすると、国の税収が減り、戦費調達にも影響が出るということが懸念されました。



このため原則、寄付は税控除や損金の対象から外されたのです。しかし、一方で、国の財政支出の代わりを担うような公益性の高いものは、税控除や損金の対象として認められることになりました。それが今も続いています」



個人として、税制の対象となる寄付をした場合、どんな制度を利用できるだろうか。



「まず、所得税では、国や地方公共団体などに『特定寄附金』を支出したときは、その金額が所得金額から差し引かれます。『寄附金控除』として、所得税がお得になります。また個人が支出した認定NPO法人や公益社団法人等に対する寄付などは(1)寄附金控除(所得控除)、(2)寄附金特別控除(税額控除)のどちらか有利な方を選ぶことができます。住民税ではふるさと納税の制度もありますね」



企業はどうだろうか。



「法人税でも、以下の3つは損金の額に算入されます。


(1)国または地方公共団体に対する寄附金


(2)指定寄附金


(3)特定公益増資法人及び認定NPO法人に対する寄附金の額(損金算入限度額を超える場合には、損金算入限度額相当額)



上記以外の寄附金については損金算入限度額を計算することになります。



今回の熊本地震の義援金についても、寄付先によって税控除や損金算入の扱いが変わります。その点についても注意する必要がありますね」


久乗税理士はこのように述べていた。


【取材協力税理士】


久乗 哲(くのり・さとし)税理士


税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部、経営学部、法学研究科非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。


事務所名 :税理士法人りたっくす



事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/


(弁護士ドットコムニュース)


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