スタバ「朝からお酒解禁」でほろ酔い出勤、仕事前の飲酒がバレたら処分される?

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2016年05月15日 09:42  弁護士ドットコム

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「スターバックスコーヒー」丸の内新東京ビル店で3月末から、アルコール販売が行われている。一般の店舗にはないが、新形態の「STARBUCKS EVENINGS」では、ビールやワイン、おつまみなどの独自商品が並ぶ。こちらの店舗は朝7時の開店とともに、アルコールが飲めるそうだ。


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店舗があるのは、多くのサラリーマンが行き交う丸の内だ。出勤前や休憩中にフラリと立ち寄るサラリーマンも多いだろう。でも、そんな息抜きが会社にバレたら問題になるのではないだろうか。水野順一弁護士に聞いた。



●休憩時間はなんでも自由にできる?


「労働者(従業員)が、勤務時間外に何をしようと個人の自由であり、使用者(企業)は、労働者の行動に干渉することはできないのが原則です。また、休憩時間についても、労働者がどのように過ごすかは原則として自由です(労働基準法34条3項)」



「原則として」ということは、例外もあるのだろうか?



「自由といっても、どんな行為をしてもいいというわけではありません。合理的な理由がある場合に最小限度の決まりを就業規則で設けることはできます。



たとえば、勤務時間外に事件や事故を起こした場合などには、企業の信用を貶めることになるので、就業規則に従って、懲戒処分を受ける可能性はあります。また、就業後と違い、出勤前や休憩時間は、短時間のうちに就労することが予定されていますので、それも考慮すべきでしょう」



アルコールはどう判断されるのだろうか。



「何をするかが、原則として基本的に個人の自由だとすると、勤務時間外の出勤前や休憩時間にビールやワインを飲むことは自由だとなるのでしょうか。実際に海外では、休憩時間中に飲酒しても問題にならないところはあるようです。



では、日本でも同じようにお酒を飲むことは許されるのでしょうか。なんとなく日本の企業では、出勤前や休憩中に飲酒した場合、上司や同僚から白い目で見られそうです(もちろん企業の規模や雰囲気によっては、そもそも問題とされないこともあるでしょう)。では、休憩時間などに飲酒することは、法的には問題があるといえるのかどうか検討してみます。



労働契約上、労働者は『職務に専念する義務』ないし『誠実に労働する義務』があります(労働契約法3条4項参照)。労働の対価として賃金(給料)をもらう以上、これは当然のことです。飲酒することで、労務に影響する程度の酩酊状態になった場合、契約上の義務を果たさなかったということになります」



●懲戒処分となる可能性は?


そのような場合、処分を受ける可能性はあるのだろうか。



「このような契約上の義務違反(債務不履行)については、直接懲戒事由になり、懲戒処分を受けるとは限りません。通常は上司から注意されて終わりということが多いでしょう。



しかし、それでも繰り返して企業の秩序を乱したり、他の労働者に悪影響を与えたりする場合には、『勤務態度の不良』を理由として、普通解雇などされる場合が考えられます。程度によっては、後で述べるように懲戒処分の対象となることあるでしょう。



ところで、『懲戒解雇』や『戒告処分』などの懲戒処分は、労働者に対する制裁なので、懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則に種別及び事由を列挙し、労働者に規則を周知させる必要があります(フジ興産事件判決、労働基準法106条、労働契約法7条等参照)。



就業規則中の服務規律(名称は異なることがあります。)には、酒気を帯びて勤務することや酩酊状態で勤務することを禁止する規定がおかれている場合があります。仮に、そのような具体的な規定がなくても、職場の秩序を維持することを一般的に禁止する規定があることが多いでしょう。



そうすると、通常の企業では通勤前や休憩時間中の飲酒を理由とした懲戒処分を課することができそうです」



飲酒したことで、いきなり懲戒解雇になることもあるのだろうか。



「実際の懲戒処分が、対象となる労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして懲戒処分は無効となります(労働契約法15条)。



結局、懲戒処分を受けることがあるのか、受けるとしてもどのような処分となるかについては、業種や職務の内容等により、結論は異なります。



例えば、バスやタクシーの運転手など、そもそも飲酒が許されない職務では、厳しい処分でも仕方がないと考えられます。また、接客や営業など他人と接触するような職種であれば、酒臭い状態で勤務することは社会通念上問題があるので、同じように考えられると思います。



しかし、一般職については、厳しい処分が妥当かは問題となるでしょう。人にもよると思いますが、ワインやビールを一杯飲む程度では、就業能力にはあまり影響がないと思いますので、いきなり懲戒解雇は行き過ぎであると思います。



そもそも一杯程度なら懲戒の対象とすべきでないという意見もありえます。ただ、他の従業員が不快な思いを抱くことで企業内の秩序を乱すおそれがあるのも否定できません。



ケースバイケースだと思いますが、日本人の一般的な常識観念など考えると、戒告程度の軽い懲戒処分を受けることは合理的な理由がないとは言えませんし、社会通念上も相当であるといえるので、処分を受けても仕方がない場合があるのではないかと思います」


休憩時間や出勤前の「軽く一杯」には注意した方がよさそうだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
水野 順一(みずの・じゅんいち)弁護士
中央大学法学部法律学科卒。2004年弁護士登録。2010年なります法律事務所開設。共著書3冊。地域に密着した法的サービスを目指しています。離婚等男女問題、相続、借金、交通事故など一般民事事件及び刑事事件を取り扱っています。最近では、離婚等の男女問題を多く取り扱っております。

事務所名:なります法律事務所
事務所URL:http://www.narimasu-law.net


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  • バブル時代 職場の近くの店のランチにショットグラスの梅酒がついてた 20ccほどで何の疑問もなく飲んでたけどね 飲めない同僚の分もいただいた
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