睡眠不足でも脳への刺激で記憶力アップ?睡眠障害による記憶障害の治療に期待

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2016年06月09日 12:00  QLife(キューライフ)

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睡眠時に起きる記憶定着のメカニズム

画像はリリースより

 私たちが生きてゆくうえで欠かせない「睡眠」。実はその役割は、すべて解明されているわけではありません。すでに知られている機能の1つとしては、起きている間に体験したさまざまな感覚が「知覚記憶」として定着する「記憶の定着作用」があります。これは、感覚情報など外部からの入力が少ない睡眠時の脳内で、内因的な情報により知覚記憶が定着するというものです。しかし、どの脳回路が知覚記憶の定着に関与するのか、具体的には不明でした。

 通常、感覚情報の知覚は体の各部位から脳の低次な領域、そしてより高次な領域へと情報が伝わる「ボトムアップ回路」ですが、感覚情報の少ない睡眠時には、大脳新皮質で行動の計画や実行、報酬や記憶に関連した活動を示す高次な脳領域「第二運動野(M2)」から、皮膚感覚や深部感覚をつかさどる低次脳領域「第一体性感覚野(S1)」に情報が伝わるトップダウン回路が形成されます。

 理化学研究所の村山正宜チームリーダーらは2015年に、M2からS1への「トップダウン入力」がマウスの皮膚感覚の正常な知覚に関与することを明らかにしました。今回、村山チームリーダーと名古屋大学、東京大学による共同研究グループは、トップダウン回路が知覚記憶の定着に関与しているのではないかと考え、研究を実施しました。

「断眠」しても脳への刺激で記憶力が維持

 まず、共同研究グループはマウスに知覚学習をさせ、その直後の深い眠り(ノンレム睡眠)でトップダウン入力を抑制したところ、知覚記憶の定着が妨げられることを発見。また、知覚学習直後のノンレム睡眠時にM2とS1を同時に活動させて光で刺激したところ、マウスは学習した知覚記憶をより長く保持することがわかったといいます。

 これらの実験で、睡眠を利用した知覚学習には「寝入り」が大切であることと、睡眠時の知覚回路を刺激して活性化することで記憶力が向上することがわかりました。またヒトや実験動物で長時間眠らせない「断眠」を行うと、記憶の定着が阻害されることが知られていますが、知覚学習後のマウスを断眠させながらM2とS1を同時に光で刺激した場合、通常の睡眠をとったマウスより長い期間近く記憶を保持したというのです。

 これらの研究により、睡眠不足の状態でも大脳新皮質を刺激することで、知覚記憶を向上できることがわかりました。大脳新皮質は脳の表面にあるため、近年臨床で用いられている「経頭蓋磁気刺激」や「経頭蓋直流刺激」などの方法で、ヒトにおいても刺激を与えることが可能です。今後、マウスにおける大脳新皮質の刺激パターンを臨床に適用できるよう改良することで、睡眠障害による記憶障害の治療法開発に応用できると期待されます。(林 渉和子)

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  • 自分はベンゾ系の睡眠薬で偉い目にあいました�㤭��
    • イイネ!16
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