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「KRAS変異肺がん」に対する新たな分子標的治療を発見−金沢大

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2016年06月10日 12:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

現在、有効な治療法のないKRAS変異肺がん

画像はリリースより

 金沢大学がん進展制御研究所 腫瘍内科研究分野の衣斐寛倫准教授と矢野聖二教授ら研究グループは、KRAS変異を有する肺がんに対する、上皮間葉移行と呼ばれる細胞の状態に基づいた個別化治療の可能性を世界で初めて報告しました。

 肺がんのうち5%程度で「KRAS遺伝子」の異常が認められます。KRAS遺伝子が産生するKRASタンパクは、正常な細胞において細胞表面の受容体から発せられる細胞増殖の指令を核に伝達する機能があります。しかし、KRAS遺伝子が変異すると、常に活性化されたKRASタンパクが生み出され、細胞増殖の指令を伝達するため、がん細胞も増殖してがんの発生や進行に影響を及ぼします。

 KRAS遺伝子に変異がある肺がんに対しては、MEK阻害薬というお薬の臨床試験が行われていますが、その効果は十分ではなく、有効な治療法は確立されていませんでした。異常KRASタンパクは細胞の増殖に関わるシグナルを伝達しますが、このうち、がん細胞の増殖に大きな役割を果たしていると考えられる伝達系「MAPKシグナル」は、MEK阻害薬では十分抑制できないことがこれまでに明らかになっていました。

MEK阻害薬とERBB3阻害薬・FGFR阻害薬の併用療法で腫瘍が縮小

 そこで、研究グループは、まずMEK阻害薬の投与後のシグナル伝達系について解析を実施。すると、MEK阻害薬は一時的にMAPKシグナルを抑制するものの、フィードバック機構と呼ばれる、本来は生体内のシグナルを一定に保つための機構を誘導することで、一度抑えたMAPKシグナルを再び活性化させてしまうことがわかりました。

 このフィードバック機構は、細胞表面の受容体の活性化によって引き起こされていましたが、関与する受容体は上皮間葉移行と呼ばれる細胞の状態により、異なることも判明。上皮間葉移行は、上皮細胞が間葉細胞の性質を得て細胞移動する現象で、がんの転移や浸潤の際に起きる現象です。

 さらに研究を進めると、上皮系の腫瘍では「ERBB3」という受容体により、間葉系の腫瘍では「FGFR1」という受容体により、MAPKシグナルの再活性化が行われることが明らかに。そこで、それぞれの受容体を阻害する薬を、MEK阻害薬とともに肺がんマウスに投与したところ、この併用療法により腫瘍の縮小が認められたというのです。

 MEK阻害薬、ERBB3阻害薬やFGFR阻害薬は、すでに複数の製薬企業によって開発が行われており、各薬剤の効果・安全性が評価されています。今回の研究結果に基づき、ERBB3阻害薬やFGFR阻害薬を用いる個別化した併用療法を行うことで、KRAS遺伝子変異肺がんの新たな治療につながるのではないかと期待されています。(林 渉和子)

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