糖尿病の薬が難病「肺高血圧症」の治療薬になる可能性−東北大

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2016年06月10日 18:00  QLife(キューライフ)

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薬剤による根治ができない難病「肺高血圧症」

画像はリリースより

 肺に血液を送るための血管「肺動脈」内の血圧が異常に上昇する疾患「肺高血圧症」。血管が極度に狭くなり、血液の流れが悪くなることで、狭くなった肺動脈に血液を流そうと心臓(右心室)に負担が掛かり、右心不全を生じてしまう致死的疾患です。「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されており、現時点では、薬剤による根治は難しく、肺移植の適応疾患となっています。発症後の平均生存期間は、成人で未治療の場合は約3年と重篤で、有効な治療薬の開発が急がれています。

 そんな中、東北大学の研究グループが世界で初めて、血管内皮細胞の酵素の1つで、細胞内のエネルギーのセンサーとしての役割を担うAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が、その発症を抑制していることを明らかにしました。血管内皮にAMPKを欠損させたマウスでは、血管内皮機能の低下、血管平滑筋細胞の増殖、炎症細胞の湿潤を認め、肺高血圧症が著しく悪化したのです。

 肺高血圧症の患者の血中には各種の炎症症状を引き起こすタンパク質が高濃度に存在し、長期的な生命予後と相関することが知られていましたが、因果関係は明確ではありませんでした。今回の研究では、肺高血圧症の重要な要素である炎症が内皮細胞のAMPKを抑制することで、肺高血圧が重症化することも明らかにしました。

糖尿病の既存薬が肺高血圧治療に高い効果か

 さらに研究グループは、糖尿病の治療薬として広く使用されている「メトホルミン」が肺高血圧症の治療薬としても有用である可能性を世界で初めて発表しました。メトホルミンを肺高血圧症マウスモデルに投与したところ、AMPKが活性化されて、肺高血圧が改善。顕著な肺高血圧治療効果を示したというのです。

 一般的に、新薬の開発では、治験における副作用などにより安全性が確保できない、また、薬効としての動態を証明できないことも多いですが、既存薬は人の体内動態も明らかで、安全性も確認されています。つまり、すでに治療薬として実用化しているものであれば、早期に低コストで他疾患の治療に応用することも可能となります。今回の研究の成果が、AMPK活性化を標的とするメトホルミンなど既存薬を用いた肺高血圧症の新たな薬物治療の開発につながることが期待されます。(菊地 香織)

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