知らなきゃ損! 人生を豊かにする「一人飲み」の作法とは

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2016年06月10日 18:02  新刊JP

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『出世酒場 ビジネスの極意は酒場で盗め』(集英社刊)
大人数でワイワイと飲むのは楽しい。
でも歳をとれば、そういう飲み方だけでは物足りなくなるときがある。

そこで、一人飲みだ。
自宅ではなく行きつけの店で一人静かに飲む。それにより、忙しいだけの日常から抜け出すことができるが、慣れないうちは少しばかり居心地が悪くもある。

そこで今回は、長年にわたって一人飲みをしてきたという、『出世酒場 ビジネスの極意は酒場で盗め』(集英社刊)の著者、マッキー牧元さんに一人飲みの作法について聞いた。

――本書を読み、最も印象に残ったのは、「大はし」の親父さんや息子さんが出す「野太い声」についてのエピソードでした。

牧元:とにかく気持ちがいいんですよ、「大はし」の親父さんのかけ声は。店に入れば、「オーいらっしゃい。オー何人?」、席に座れば「オー何にする?」と、腹から声を出して聞いてくれる。

野太い声が、もてなしの心を引き締め、客を潜在的に心地よくさせるということを彼らは知っているんでしょう。

――本の内容からは少し逸れてしまうかもしれませんが、印象的な声とともに思い出す人を…といわれたら、どんな方が思い浮かびますか。

牧元:今は亡き、日本橋「千八鮨」のご主人は忘れがたいですね。歌舞伎役者のような二枚目で、声はヴァリトンヴォイス。江戸前鮨の様々なことを教わりました。
それと、赤坂の芸者、育子お姉さんも、72歳なのに実に声が可愛らしくて印象に残っています。

――本書には他にも下町のお店が多く登場します。牧元さんはなぜ下町の酒場に惹かれるのでしょうか。

牧元:いくつかありますが、思いつくままに挙げるなら、気取りがない、人情がある、建前や絵空事がない、常連客が多い、若者が少ないといったことが、下町酒場の魅力ですね。

――本書を読むと、一人飲みの魅力に気づかされます。牧元さんが長年にわたって一人飲みをしてきたからこそ分かった、「一人飲みの作法」のようなものがあれば教えてください。

牧元:作法は「静かに飲む」。これに尽きると思います。隣の人の邪魔にならない、もちろん話しかけない、混んできたらさっさと去る、自分の酒量をわきまえている。これらのことを意識するだけで、一人飲みをかなり楽しむことができます。

――牧元さんの言葉で一人飲みの魅力をあらわすと、どのようになるでしょうか。

牧元:一人で飲んでいるうちに、次第に酔ってくる。仕事の垢が落ち、憂さはどこかに消え去り、自分の時間が戻ってくる。
自分だけの時間に浸りながらも、自分を客観視するような感覚もあり、どんなに落ち込んでいても、「たいした事ないさ」と思い始める。そんなところでしょうか。

――本書で紹介されているメニューはどれもおいしそうでした。牧元さんが、書こうとする対象のおいしさを損なわせないために気をつけているのはどんなことですか。

牧元:文章のテクニックよりも、「なぜこの料理をおいしいと思ったのか」を、自分の中で整理して解を出すよう心がけています。

――他の作家さんによる「食べ歩き」をテーマとしたルポやエッセイで、牧元さんが学生時代などに繰り返し読んだ作品を3つ教えてください。

牧元:丸谷才一さんの『食通知ったかぶり』、檀一雄さんの『檀流クッキング』、増井和子さんの『パリの味』です。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

牧元:酒場には、沢山の学びがあります。行きやすいいつもの店ではなく、未知の店に
出かけてこそ多くの学びに出会えます。さあ飲みにいきましょう。出来れば一人でね。

(了)

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