【コラム】 犯罪多発の街にそびえる「地上の楽園」

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2008年02月12日 11:08  よりミク

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よりミク

 「トレイン・スポッティング」や「ザ・ビーチ」で有名なダニー・ボイル監督の新作が今年公開されようとしています。麻薬売買を仕切るボスの支配下におかれた少女の物語なのですが、映画の舞台となっているのが南アフリカ・ヨハネスブルクにそびえる実在の建物「ポンテタワー」。今回はヨハネスブルクで有名な、この「いわくつき」の建物にスポットを当ててみました。  「ポンテタワー」は、1975年に建設された、マンションとショッピングセンター(現在は閉鎖)を備えた54階建てタワーマンションです。建設当時はメディアなどで「地上の楽園」とまで呼ばれ、裕福な白人社会のシンボルでした。しかし、その後、アパルトヘイト廃止にともない地域の治安が悪化。裕福な白人たちは去り、「ポンテタワー」は、ギャングや麻薬密売人などの巣窟となります。ところどころの窓ガラスが割られ、ゴミが投げ捨てられるなど、異様な雰囲気を醸し出すまでに様変わりしてしまいました。一時期は、自殺の名所にもなっていたそうです。
携帯会社「Vodacom」の看板がポンテタワーの目印
携帯会社「Vodacom」の看板がポンテタワーの目印
 「ポンテタワー」の中央部分は吹き抜けになっており、下から眺める光景は圧巻です。天上から光が差し込んでいる様は神々しく、ここがかつて「地上の楽園」と呼ばれていたゆえんを垣間見せてくれます。逆に、上から下を覗くと、まるで地獄へと続く螺旋階段のようにも見え、この建物自体が「光と影」の両極端をあわせ持っている、そんな気さえしてくるのです。ポンテタワーについて書かれたブログや掲示板を見てみると、やはりその圧倒的な存在感に驚き興奮する声が多数挙がっていました。南アフリカが世界でも有数の犯罪多発国であるため(1年で約1万9200件の殺人事件が発生。南アフリカ警察当局発表)、「ポンテタワー」に対する恐怖感がリアリティを帯び、なおさら興味をひきつけているのかもしれません。
晴れた日は、眩しいほどの光が降り注ぐ
晴れた日は、眩しいほどの光が降り注ぐ
下には深い闇が広がっている。夜になると漆黒の世界に
下には深い闇が広がっている。夜になると漆黒の世界に
総戸数1000戸超というだけあって、その存在感は圧倒的
総戸数1000戸超というだけあって、その存在感は圧倒的
 そうなると知りたくなるのが、南アフリカの実際の治安状況です。南アフリカ在住の日本人の方々に話を聞いたところ、実際は「そこまで危険ではない」とのことでした。ただし「ポンテタワー」が立つヒルブロウ地区はガイドブックでも「足を踏み入れてはいけない地域」と明記されており、「夜は車でも現地人は近づかない」「銃を3度頭に突きつけられケープタウンに引っ越した日本人がいる」「会社から家に帰るときは、尾行されていないか必ず気をつける」等、日本と同じ感覚で暮らせる状況とはほど遠いようです。また、南アフリカの首都プレトリアでは今年に入り、日本大使館職員が2日連続で強盗に襲われるという事件がありました。「そこまで危険ではない」という意見は、「想像していたよりは危険ではない」という意味なのかもしれません……。  話を再び「ポンテタワー」に戻しますが、「ポンテタワー」は今新たに生まれ変わろうとしています。2010年サッカーW杯へ向け「ニュー・ポンテ・プロジェクト」と題し、大規模工事をおこなうのです。建設当時の華やかなイメージを取り戻すべく、建物内に高級レストランやカフェ、スーパーマーケットなどを新設し、各部屋の内装も刷新。賃貸はなくなり、すべて分譲になるとのこと。ちなみに、販売価格は一戸600〜1400万円ぐらいを予定しています。
ニュー・ポンテ・プロジェクトHPでは、部屋の内装などを確認できる
ニュー・ポンテ・プロジェクトHPでは、部屋の内装などを確認できる
 1万4千キロも離れた国に暮らす私たち日本人にとっては、ミステリアスでいわくつきの「ポンテタワー」の方が魅力的かもしれませんが、これも時代の流れなのでしょう。南アフリカでサッカーW杯が開催される2010年、ポンテタワーが再び「地上の楽園」と化しているのか、今から楽しみです。(編集/執筆:mixiニューススタッフ) 写真提供: Jeff Smith 関連サイト: ニュー・ポンテ・プロジェクト(英語) http://www.newponte.co.za/index.htm
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