睡眠時無呼吸症候群患者に多い緑内障、原因は夜間眼圧の上昇ではなかった!?

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2016年06月21日 12:00  QLife(キューライフ)

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コンタクトレンズ型眼圧計で睡眠中の眼圧を測定

 睡眠中に呼吸が停止する発作が繰り返し起きる睡眠時無呼吸症候群。その患者は脳梗塞や心筋梗塞など心血管系の病気になりやすいことが知られています。また、緑内障の有病率が約10倍も高いことも明らかになっています。しかし、何故、睡眠時無呼吸症候群の患者が緑内障を発症しやすいのか、その理由はわかっていませんでした。

 緑内障は、眼圧の上昇などにより視神経が害され、視野が狭くなっていく病気です。眼圧とは眼球の硬さを示す値で、角膜や水晶体などの組織に栄養や酸素を供給する前房水の影響を受けます。前房水は静脈系に流れ込むため、心臓がある胸腔内圧の影響を受け、心拍や呼吸とも関係するため、無呼吸発作は眼圧にも何らかの影響を与えていると考えられていました。

 睡眠時無呼吸症候群の影響を受ける夜間の眼圧を測定するには、いったん患者を起こし、数時間おきに測定しなければならず、睡眠中の眼圧を測定するのは困難でした。そこで、北海道大学の研究グループは、スイスのセンシメッド社が開発したコンタクトレンズ型の眼圧計を使用して、患者の睡眠を妨げることなく、睡眠中の眼圧を持続的にモニターしました。

無呼吸発作中、眼圧は下がるが…

 このコンタクトレンズ型眼圧計には、眼圧の変化を感知するセンサーがついており、5分毎に30秒間の記録を行います。同時に睡眠の状態をモニターし、睡眠中の脳波や呼吸、筋電図、心電図、いびき、酸素飽和度などを記録。その結果をもとに、測定した眼圧を睡眠中の呼吸が停止している時と停止していない時に分けて比較し、無呼吸発作が眼圧に与える影響を調べました。

 その結果、無呼吸発作時には気道閉塞が起こって息が吸い込めなくなるため、胸腔内圧が下がり、非発作時より眼圧が下がっていることが明らかになりました。通常、息を止めた時には胸腔内圧が上がるため、眼圧は上昇しますが、睡眠時無呼吸症候群患者では逆の現象が起きていたのです。しかし、無呼吸発作によって眼圧は下がると同時に、血中酸素飽和度も下がっており、低酸素状態など眼圧上昇以外のメカニズムによって視神経障害が引き起こされていると考えられるといいます。

 今回の研究により、眼圧が上昇しなくても低酸素状態があれば、視神経が障害を受ける可能性が示唆されました。これは、日本人に多くみられる眼圧が上昇しなくても発症する緑内障「正常眼圧緑内障」の病態を解明する一助になると期待されます。また睡眠時無呼吸発作を診断された患者は、眼科で定期検査を受けるなど、正常眼圧緑内障の発症に注意する必要がある、と警鐘を鳴らしています。(林 渉和子)

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