建物全体で太陽の光を集めるヨーロッパの山小屋たち

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2016年06月27日 11:00  FUTURUS

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FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

北極海の氷河がモチーフ

チェコの建築家集団、Atlier 8000がクリエイトしたキューブ型の、こんな面白い山小屋がスロバキア北部の山岳地帯にお目見えした。雄大な大自然の凍った山々の斜面を豪快に滑り落ちる雪崩や、北極海へ音をたてて落下する氷河にヒントを得てデザインされた小屋だというが、まるで山の斜面から滑り落ちそうな、あるいはすでに滑り落ちてしまったあとのような、実に不思議な感覚を見る者に与えるリアルさがある。

Source: http://www.atelier8000.cz/

この山小屋は、国際デザインコンテストのために考案・制作されたもので、普段は一般スキーヤーのためのホテルとして使用されており、レストランやカフェもある。外観からもわかるように、内部もそれに伴って非常にユニークな構造になっているのがウリになっており、天井が傾いていたり、床には傾斜があるように見えて実際は傾斜がないなど、視覚の錯覚を随所で体験できるような造りだ。

エコなソーラーキューブ

小屋内部の建築材には樫の木が使用されているが、外壁は、窓をのぞいてすべて金属板で覆われており、さらにその上に1メートル四方のアルミニウムパネル(モジュール)が貼り付けられているのが特徴だ。この、小屋の表面を覆っているアルミニウム板は、太陽光を効果的に集める役割を果たしているのだが、特に小屋のファサード(正面)には、もっとも強い東南からの太陽光線を集中して吸収できるよう工夫がなされているという。

ソーラーパネルというと、屋根の上に取り付けられた状態のものを連想するかもしれない。しかしこの小屋は、アルミニウムパネルで全体が覆われているため、太陽光線を最も効果的に集めることができる、いわば巨大なエコ・ソーラー・キューブといったところだ。

ところ変わって、スイスのペンニネ・アルプス山脈のほぼ中央あるTraciut Hutと呼ばれる山小屋も、雪を抱いた山岳を背景に美しく映えるソーラー小屋として、その外観がユニークで話題となっている。この小屋は、1942年に建築された小屋をリノベーションしたものだが、スイス・アルペン・クラブ のデザイン賞を受賞しているという。デザインと制作は、スイスのSavioz Fabrizzi Architectesと呼ばれる建築家集団によるもので、この建築家集団はユニークかつエコな建築物をプロデュースすることに長けている。

ltvs-saviozfabrizzi-08

このTracuit Hutの骨組みと壁は木造だが、冬期アルプスの過酷な気候に耐えうるよう、その上にステンレス、そして、銅製の反射板とソーラーパネルで覆われており、太陽光を効果的に吸収することができるエコな山小屋である。その構造だが、広間などスペースが広い部屋の窓ガラスを大きくすることで太陽光を積極的に取り入れ、さらに断熱材を随所に使用し熱容量を高くすることで、太陽熱を逃がさずに保存することに長けた小屋といえるだろう。

 エコ住宅へのこだわり

ヨーロッパ人たちは、ここにあげた2つの山小屋に代表されるような、デザイン性に優れ、かつエコの機能性が高い住居に対するこだわりが強い。それはなぜだろうか?

北欧や西欧、そして中欧の国ぐにでは、1年の半分は曇天で、季節によっては雨や雪の日が続くことも多い。人々はいやが上にも家の中にこもりがちになる。そのため、家を持つなら心地よいのみならず、無駄な贅沢を省いて経済的に過ごすことを好むのだ。その要求をほぼすべて満たすのが、エコな家なのである。家の内部のみならず、外回りの環境をも整えれば、内外問わず機能的で住みやすく、しかも地球にやさしい家で暮らすことができるというわけだ。

特に、スイス、そして北欧の国々ではその気候風土から、各家庭での熱(暖房等)の損失をいかにして減らすかという課題に取り組んできた。太陽光でためた熱を逃がさぬようにするために、最も効果的なのはどのような方法だろううか。そのためには、優れた断熱法を用いなくてはならない。例に挙げた山小屋は、外壁から屋根のメイン部分に至るまで、ほぼすべてが太陽光吸収用パネルで覆われている点から考えても、断熱には非常に効果的といえるだろう。

少し前の話になるが、欧州議会では2009年、「10年後の2019年以降から新築する住宅は、エネルギー消費ゼロであることと同時に、住宅そのものが何かしら環境に対して献上する必要がある」との提議が賛成多数で可決されている。ということは、あと3年後以降に新築される住宅がエコ住宅になることはもちろん、現存する住宅も、エネルギー効率に改善が必要になり、国または自治体などが定めた省エネ基準を満たす義務が生まれることになる。

既にオランダなどではこれを踏まえ、エネルギー効率改善のために各自治体が支援としての資金を投じる計画が練られている。太陽光を集め、その熱で蓄電し、生活に必要なエネルギーを自給しつつ、省資源に徹底するためのエコな住宅の普及が、にわかに現実性を帯びてきたといえるだろう。日本政府が掲げた、2020年までに温暖ガスを25%削減するという計画を実行に移すこと、そしてその目標を達成するためにも、ヨーロッパのエコな住宅が良き先例となるに違いない。

<関連サイト>

http://www.atelier8000.cz/

【参考:画像】

※ Atlier 8000

2枚目は、Lancia TrendVisionsのTwitter画像

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このニュースに関するつぶやき

  • 設計の視点から見ると非常に面白いが、現場で実際に造る建築会社(俺)の視点だとまずこれを作るにはどうすればいいか資材搬入(トラックがここまで行けるのか)とか電気水道などの引き込み方法とか色々考えてしまう
    • イイネ!1
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