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産後10年目に発見した感謝のことば ――男性の当事者意識は「巻き込まれる」ことから

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2016年06月30日 12:02  MAMApicks

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週末の蒸し暑さで扇風機を出すことにした。しまい込んだ扇風機の箱の上に乗っていた古い書類の束に、出産した年の手帳を見つけて、開いてみたら「分娩後アンケート」という紙切れが出てきた。10年前に出産した総合病院で、一応書いたけれど出しそびれたものがそのままはさまっていたようだ。

■すっかり忘れていたこと
「ご出産の感想をご自由にお書きください」の項目にはこんなことが書いてあった。

「当初、夫の立ち会いは陣痛室までと思っていたのですが、マタニティクラスをふたりで受けて気が変わり、結局さいごまで立ち会ってもらいました。妊娠中を含め、夫の助けがあってこそやってこられたと思うので、大切な誕生の瞬間を独り占めせずに共有できたことが貴重でした。」

いかにも提出用の、よそゆきのつまらない感想だけれど、「夫の助けがあってこそ」に素直に触れているところがすごい。そんなストレートな感謝の意はこの10年の間にすっかり忘れていた。

■そういえば結構巻き込まれていた
妊娠した頃、夫婦ともフリーランスで家で仕事をしていたので、互いの日常も仕事も境目がなく、家事も適当に両方でやっていた。だから、一方が吐いていれば、もう片方が調理を担当するのは自然な成り行きで、私のダラダラ続くつわりに、夫はたしか長期間巻き込まれていた。


里帰りもなしだったから、出産時も全対応。夫にとっては「仕事上最もありえないタイミング」で、夜中にタクシーで病院&そのまま成り行きで出産立ち会い。翌朝遅くに生まれて夕方ようやく帰宅したら、部屋は破水して出かけたときのままで結構な状態だったらしい。掃除も必要、仕事もまずい。

予定外に早く生まれ準備も不十分で、レンタルベビーベッドは入院中にぎりぎり届き、足りないベビーグッズは私が病院でカタログをチェックして夫が家から注文したり買いに行ったりした。

そうだった、夫もかなり巻き込まれて、いろいろ大変だったんだ。ついでにその後もすごくいろいろあって、ふたりともとにかくけっこう大変だった……。
当初は私も素直な感謝を示していたんだなぁ。

■女は「放り込まれる」男は「巻き込まれる」
女性は妊娠したときから体が変化して、否応なく「体を使われる」ような感覚がある。体の変化は決して楽ではなくて「体調不良」に延々と対処していく感じだ。出産だって予測不能で目の前の状況を受け入れるしかない。産まれたら赤ちゃんのケアで生活環境の変化は相当なものだ。

そういう状況にポンと放り込まれて、生活や仕事やたくさんのことを調整しなければならず、「なんで私ばっかり?」という気持ちに陥りやすい。

男性の場合は、自分の体が使われないから放り込まれる感じとは違うだろう。目の前のパートナーがつわりで苦しんだり、あちこち体調が悪くなって、育児が始まれば疲弊して……その変化を通して「巻き込まれる」という感覚かもしれない。でも、だからこそ、ここで本気で巻き込まれて、それらの変化に一緒に対処するのが重要だと思う。

■「巻き込まれる」のが当事者意識になる
男性は「当事者意識がうすい」と言われがちだけれど、ここで本気で「巻き込まれる」ことこそが、男性にとっての「当事者意識」になると思うのだ。

女性と違って自分の体が変化しないから、意地悪な言い方をすれば、逃げようと思えばいくらでも逃げられる。関わらないで済ますのは簡単だ。気づかないふりだってできる。

悪気はなくても、激務で日常を一緒に過ごす時間が少なかったり、妻の里帰りで産後の1〜2ヵ月を離れて暮らせば、「女性の放り込まれ感」が見えずに、その深刻さに気づかないかもしれない。

だから、やむをえず巻き込まれてしまう環境にある人以外は、意識的に知ろうとして「巻き込まれる努力」をしないと、他人ごとのまま過ぎてしまう可能性は高い。

■「巻き込まれない」ことは致命傷になるかも
すべてが変わって必死に対処している妻にとって、同じ親なのに夫だけが巻き込まれずに以前と同じペースで生活を続けることは、アンフェアに感じられ、意外なほどストレスになるものだ。

ふたりの子どものことなのに、夫が「巻き込まれる気がない」としたら、それは妻には「無関心」にうつり、将来への失望につながりかねない。

自分は変わらず仕事だけに集中して外側から派手な応援をするより、仮に小さくても自分も生活を変えて内側で手を貸す方が当事者らしい。多分、妻がほしいのは感謝なんかじゃない、一緒にあたふたしてくれる仲間だ。

自分の生活サイクルや仕事を調整するのって楽なことではない。リズムは狂うし、仕事も気になるし、趣味の時間もなく「なんで俺ばっかり?」と被害者意識すら持つかもしれない。でも、その感覚って、女性が妊娠出産で直面するあらゆる調整ごとに対処して「なんで私ばっかり?」と思うのと、すごく似ている。

もちろんそれぞれの状況でやれることには限界があって、やる分量では測れない。でも、夫が積極的に巻き込まれれば、妻にその本気度は伝わるはずだ。

■いいことは忘れる・嫌なことは忘れないけれど……
夫が「巻き込まれた」としても、妻との温度差はある。そして、放り込まれて必死な妻は、巻き込まれてがんばる夫の努力や大変さには気付きにくいし、マイナスの記憶の方が強く残る。でも、ふたりが完全に巻き込まれて「当事者として大変な時期を共にした」という事実は、大切な信頼感のベースとして作用するはずだ。仮に一旦忘れたとしても……。

すっかり忘れていた10年前のアンケートの自分の文字を見て、当時の「お互い大変だったよなぁ」の状況を思い出したら、どこか張り合ってばかりの気分が、ちょっとやわらかい気持ちになったような気がする。

嫌なことは吐き出すために書いたり喋ったりしたらいい。そして、いいことや感謝の気持ちは、たぶん嫌なことで全部吹き飛んで忘れるから、いつか思い出すかもしれない日のために、書き留めておくのがよさそうだ。

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狩野さやか
Studio947でデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる。自身の子育てがきっかけで、子育てやそれに伴う親の問題について興味を持ち、現在「patomato」を主宰しワークショップを行うほか、「ict-toolbox」ではICT教育系の情報発信も。2006年生まれの息子と夫の3人で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者資格有り。

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