IoTを活用したスマート治療室の「最終目標モデル」と「基本仕様モデル」が完成

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2016年06月30日 18:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

手術の精度と安全性の向上目指す

画像はリリースより

 私たちが手術などの治療現場に抱くイメージといえば、医師がさまざまな指示を出し、多くの医療スタッフが忙しそうに仕事をこなしている様子ではないでしょうか。限られた時間で判断を迫られる医師の負担も大きいと思いますが、それぞれのスタッフもまた負荷のかかる仕事であることは想像できます。そんな中、世界に先駆けて開発が進められてきたのが「スマート治療室」です。「スマート治療室」とは、各種医療機器を連携・接続させて手術の進行や患者さんの状況を統合、把握し、それにより手術の精度と安全性を向上させるというもので、より円滑な医療現場への改善が期待できそうです。

 そして、このたび東京女子医科大学に完成したスマート治療室の「最終目標モデル(プロトタイプ)」で、各種医療機器の連携・接続の実証が進められることになりました。また、広島大学病院には「基本仕様モデル」が完成し、実際の患者への適用についての検証が開始されます。開発には、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の村垣善浩教授を中心に、広島大学・信州大学・東北大学・鳥取大学の5大学と、日立製作所、東芝メディカルシステムズ、パイオニアら13社が参加しています。

 「スマート治療室」の開発により、手術中の診断情報などをスタッフで共有でき、現場外からの助言も受けることができます。さらに医療機器の設定ミスによる医療トラブルの防止や、治療を受ける患者さんのQOL(生活の質)向上にも貢献するなど、患者の立場から見ても望ましい変化といえるのではないでしょうか。

医療機器の連携によりもたらされるメリット

 では、治療の現場で使われている医療機器にはどのようなものがあるのでしょうか。呼吸、心拍、体温などの患者の状態をリアルタイムでモニタリングするものや、顕微鏡、MRI、超音波診断など、患部の状態を診断するもの、電気メスなどの治療を行うもの、さらには手術者の動作などを補助・支援するものなど多くの機器があり、さまざまな情報を収集しています。

 しかし、製造者も仕様も異なる多くの医療機器の連携は難しくはないのでしょうか。実は、治療現場よりもはるかに多数・多様な作業機器が存在するのが工場の現場。それらの作業機器を統合的に制御・管理するためにミドルウエア(ソフトウエア)が活用されています。今回のプロジェクトでは、産業用ミドルウエアを医療機器への連携・接続し、活用することも目指しているといいます。

 さらに、医療機器の連携・収集したデータが共有されることで、治療現場外のサポートとの協力がしやすい環境となり、治療の精度や安全性が高まることが期待されます。機器が収集したデータを時系列の治療記録として管理できますから、より高度な解析も可能になるのではないでしょうか。また、単純な操作ミスの防止はもちろん、稼働時間の短縮や電気使用の低減などのコスト管理の面でも大きなメリットとなりうるため、医療スタッフや病院、患者に至るまで、「スマート治療室」に期待を寄せる人も多いのではないでしょうか。(樹本睦美)

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