「未亡人の方がステータス高い」夫の早死にを願う妻たち

4

2016年07月03日 11:02  新刊JP

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

新刊JP

「夫」と検索すると、予測検索ワードに「死んでほしい」とサジェストされるのが数年前に話題になった。「そんなに嫌なら離婚すればいいだろう」と思ってしまうかもしれないが、それはあくまでも手続きの話であり、彼女たちが反射的に持つ感情は「死んでほしい」なのだ。

フリージャーナリストの小林美希氏によるルポルタージュ『夫に死んでほしい妻たち』(朝日新聞出版刊)には、育児と結婚生活にまつわる夫婦の思考のギャップや、夫の早死にを願ってしまう女性たちが、どのような悩みを抱え、葛藤しているのかなどが綴られている。

◆育児を「家族サービス」だと思っているのがムカつく七瀬美幸さん(仮名、38歳、広告会社勤務)は、29歳のときに会社の先輩と職場結婚。同じ会社ということもあり、仕事復帰への理解や、大きな意見の相違などもなかったという。しかし美幸さんが気に食わないのは、夫の育児参加への態度だ。

「休日に『家族サービスだ』と言って、張り切って赤ちゃんの相手をして、家事もしたりする夫の姿を見ると、なんだよ、こいつ、と舌打ちしたくなる」

それでも夫の気遣いを尊重して、子どもを任せてリフレッシュに出かけて行っても、1時間もしないうちに携帯電話で呼び戻されて、結局自分がすべて見ることになるというのだから、美幸さんが怒るのも無理はないだろう…。

◆子育ての「お楽しみ」だけで、「イクメン」気取りがムカつく国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、週1〜2回以上育児を遂行した夫の割合での最多は「遊び相手をする」(87.5%)で、次点が「風呂に入れる」(82.1%)となっているが、これらは子育ての中でも「お楽しみ」的な色合いが強く、妻の負担軽減になっているかと言われれば微妙だ。

美幸さんが本当に手伝ってほしい「保育園の送り迎え」は、仕事を理由に手伝ってはくれず、「お友達のパパはお迎えだって来ているよ」と不満を漏らすも、返ってきた言葉は、「なんの仕事をしてるんだろうね。暇なのかね」という偉そうな言葉だったという。

◆育児もせずに「上から目線の発言」は滑稽である「金を稼いでいる」というプライドがあると、育児参加はあくまでも「家族サービス」と考える男は多いだろう。しかし妻からしてみると、そんな俺様的な態度は滑稽にしか映らない。

美幸さんは、偉そうな言葉を吐きながら、楽しい育児ばかりしてイクメンを気取る夫に、「もう、あんた死んでくれ」と夫への怒りを抑えきれない。

◆年収1000万円のキャリアを断絶され、夫に言われた最低な言葉とは加藤咲子さん(仮名、46歳、一部上場企業管理職)は、新卒で超難関と言われる政府系金融機関に就職し、20代のうちから外資系金融機関から年収1000万円でヘッドハンティングされたキャリアウーマンだった。

咲子さんは転職と同時に結婚し、上司に妊娠を報告すると、「仕事、辞めるんでしょ」と当然のように辞職を促されたという。夫は単身赴任中で、実家も遠くて頼ることができず、保育園のお迎えさえままならない状況に限界を感じ、せっかく入社した会社も数カ月のうちにバーンアウトしてしまった。

苦渋の思いで輝かしいキャリアを捨て、家事をこなし子どもと過ごしている咲子さんに対して夫が発した言葉は、「子どもと遊んでいるだけで、いいよね」というものだった。

――こいつ!死ね!!

どんな思いでキャリアを中断したのか少しも理解を示さない夫の態度に胸が熱くなるのを感じ、この言葉が引き金となり夫への愛情が尽き、その時からセックスレスになったという。

◆11年の時を経て、一部上場企業に再就職咲子さんのキャリアを生かせる仕事は、夫の転勤先である九州地方には少なく、一時は年収がかつての3分の1にまで落ち込んだという。しかし、歯を食いしばって目の前の仕事をこなし、2015年に入ってから、一部上場企業の管理職として転職が決った。

ようやく咲子さんはキャリアを再開できて、夫にも引けを取らない年収となったが、夫が「いやぁ、彼女はいっつも僕より給料が高くて威張ってますから」と友人の前でヘラヘラしているのを見て、耐えられなくなったという。

息子がだんだん頼れる存在になってきたこともあり、「夫の存在価値がわからなくなった」という咲子さん。職場には独身の男性社員がたくさんいるため、「夫が早死にして未亡人になったほうがステータスが高くなっていいかもしれない」と、夫の死を願うようになった。

咲子さんの当面の目標は、「彼氏を作ること」だという。

 ◇   ◇   ◇

おしなべてスポットの当たることの少ない「どこかの夫婦のサブストーリー」から、育児にあたる妻がどのようなことで葛藤し、何が原因で夫の死を願うような感情に至るのか、そのことが知れる本書は貴重な一冊と言えるだろう。

このニュースに関するつぶやき

  • D’oh!
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定