タンパク質凝集体の形成メカニズムに関する研究を千葉大らが実施
画像はリリースより神経系に変性をきたす病気の1つ「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」。2014年にアイス・バケツ・チャレンジという支援で話題になりましたね。ALSは、神経細胞や神経細胞から出てくる神経線維が徐々に壊れることで、神経の命令が伝わらなくなり、筋肉が縮んで力が入らなくなります。進行性の病気で、現時点で原因がわかっていないため、有効な治療法はほとんどありません。このALSなどの神経疾患の原因解明につながる可能性がある新たな発見を、千葉大学の板倉英祐助教、MRC laboratory of molecular biologyのRamanujan Hegdeグループリーダーらの共同研究グループが報告しました。
人間の身体では、ゲノムの中に約2万種類の遺伝子があり、それぞれの遺伝子がタンパク質として機能しています。それらのタンパク質約2万種類のうち25%を占めているのが「膜タンパク質」です。水と混ざりにくい高疎水性の領域(膜貫通ドメイン)をもつ膜タンパク質は、細胞質で合成された後、ミトコンドリアなどの膜へ輸送されて働きます。
この膜タンパク質の輸送が失敗すると、タンパク質凝集体が形成されます。一部の神経疾患では、タンパク質凝集体の形成を伴うことがわかっていましたが、凝集体形成のメカニズムについての詳細は解明されていなく、その仕組みを理解することが疾患の根本的な予防や治療に役立つと期待されています。そこで今回、板倉助教らはタンパク質凝集体の形成メカニズムに関する研究を実施しました。
「ユビキリン」がお掃除役に
正常な状態では膜タンパク質がミトコンドリアに輸送されますが、ミトコンドリアがストレスを受けると、膜タンパク質の輸送がうまくいかないことがわかっていました。そこで研究グループは、輸送に失敗した膜タンパク質がその後どうなるか調べたところ、ミトコンドリアに辿り着けなかった膜タンパク質は、「ユビキリン」と呼ばれるタンパク質と結合することで、保護されていることを発見したのです。
さらにユビキリンは結合している膜タンパク質を分解する機能も担っており、ユビキリンが働かなくなると、細胞内の膜タンパク質が凝集体形成を起こしやすくなることが判明。これらの結果から、ユビキリンは細胞質の余分な膜タンパク質を“掃除”してタンパク質凝集体の形成を防ぐ、タンパク質品質管理システムとして働いていることがわかりました。
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今回の研究により、ユビキリンの機能低下がタンパク質凝集体の形成を引き起こすことが示唆されました。ユビキリン遺伝子は、ALSの原因遺伝子としても報告されていることから、今回判明したユビキリンの機能がALSの発症と関連している可能性も考えられます。研究成果は今後、ALSなど神経疾患の原因解明につながると期待されます。(林 渉和子)
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