今年は特に危険な「じわじわ梅雨明けパターン」!?健康気象学から考える熱中症対策

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2016年07月21日 18:00  QLife(キューライフ)

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気象予報士の村山頁司さんが今年の夏と熱中症を解説

気象予報士の村山頁司さん

 気象庁は18日、「九州と中国、四国、近畿それに東海が梅雨明けしたとみられる」と発表。これからの季節、対策が必要なのが熱中症です。大塚製薬株式会社は7月14日にプレスセミナーを開催。元NHK気象キャスターで気象予報士の村山頁司さんが「今年の夏の気象と熱中症に関わる取り組み」と題した講演を行いました。

 1987〜2007年までNHKで気象解説を担当していた村山さん。「これまでにスギ花粉情報、紫外線情報、熱中症予報情報を開発したほか、どんな気象状況で喘息の発作が起こりやすいかを研究しています。このように、気象的な要因が病気に影響を調べ、どうやって予防するか、発作を防ぐかを考えることを『健康気象学(生気象学)』と言います」(村山さん)

 「東京は、昔よりものすごく暑くなっています。昔と同じ対策を取ってもダメです」と村山さんは警鐘を鳴らします。「真夏日の日数は、80年代は平均40日弱でしたが、今では60日、暑い年には70日にもなります。熱帯夜の日数も平均で20日程度だったのが今は30日以上、2010年には50日を超えました。昔のように窓を開けてすだれをかけるような対策ではとても間に合わないというのが実情です」(村山さん)

 昔は平均で年間200時間程度だった30度を超える時間も、今では年間約400時間と2倍に。暑い年では500〜600時間にものぼり、昔のように朝夕の涼しい時間が無くなってしまいました。さらに、汐留エリアなど東京湾に面した地域を中心に、数多くの高層ビルが建設されたことにより、東京の風は弱くなっているとのこと。「風はビルに当たるとその摩擦で弱くなります。東京全体の7月の平均風速は、昔に比べて0.5メートル弱くなりました。温度は高く、風邪は弱い。これは熱中症になりやすい気象条件が昔よりひどくなっているということです」(村山さん)

今年は特に注意が必要な「じわじわ梅雨明けパターン」

 今年の夏について、村山さんは、「東南アジア付近の低気圧が強く、その分北側の高気圧が大きくなって、日本列島を真上から覆います。さらに上層のチベット高気圧が日本を覆うことで、ダブルの高気圧に日本列島が包まれます」と語り、「(7月14日現在)梅雨前線が日本の南海上にあります。梅雨前線が一気に北上して、梅雨が明けるというイメージがあるかもしれませんが、南に停滞したままだんだんと弱って、いつの間にか夏が来る“じわじわ梅雨明けパターン”の場合も。今年はそれに該当するのでは」と予想します。6月末からずっと暑い状態が続いており、「晴れた日はものすごく暑いし、雨の日も26度前後と蒸し暑い。昔のような梅雨寒は全くなってしまいました」(村山さん)

 「7月より8月、8月より9月と、平均気温よりも高い傾向が続き、9月は北海道から沖縄まで、平均気温よりも高い確率が50%と予想されています。50%ということは、はっきり言ってほぼ間違いなく暑くなるというこです。最後に30度を超えるのは10月でしょう」と村山さん。また、今年は海水温も高いため、海からの風が吹いても蒸し暑いことが予想されるといいます。

 では、どのような時に、熱中症に対する警戒を強める必要があるのでしょうか。村山さんは「梅雨の晴れ間や梅雨明け直後、急に暑くなった時が危ないです。また。気温はそれほど高くなくても、湿度が高い、風が弱いと危険性が高まります。記録的な猛暑だった2010年は、最初の熱波の時に死亡者数が全国で10人を超えました。しかし、その後の熱波の時は、気温はさらに上がったのに、死者数は減りました。つまり、1回目の熱波に警戒を」と語ります。

 さらに村山さんは「高齢者では、特にこの“じわじわ梅雨明けパターン”が一番怖い」と語ります。「じわじわ気温が上がっていくと、夜眠れない、食欲不振、体力が落ちて夏バテの状態になります。それが続いた後に35度、36度になると室内でも熱中症になる危険性が高まります」(村山さん)

温度変化を感じにくい高齢者「温度計が30度になったらエアコンを」(村山さん)

 熱中症は、気温が31度を超えたあたりから増加します。人間の皮膚の温度は、通常33度くらいです。皮膚の温度より気温が低いのに、なぜ熱中症が増えるのでしょうか。その答えは、天気予報の「気温」と私たちの感じる「気温」の差にあります。「天気予報の気温は、直射日光の当たらない芝生の上で、さらに測る直前に風を当てて測っています。簡単に言えば、「日陰の」「風通しの良い」ところで計測された気温です。日なただと、それよりも4、5度高くなります。」と村山さん。「今日は暑いからといって窓を開けても、入ってくる風は35度。庭がカンカン照りだったら40度の風になってしまい、室内でも熱中症になる可能性があるのです」(村山さん)

 体温の上昇を防ぐために人間の身体に備わっている冷却方法は、「皮膚の表面から熱を逃がす」「汗をかいてその気化熱で身体を冷やす」の2つしかありません。水分補給の重要性は、広く認識されつつありますが、村山さんは「水だけ飲むとかえって脱水症状を起こすことがあります。汗の中にはナトリウムやカリウムなど電解質が含まれます。ただの水だけ飲むと体内の電解質濃度が下がり、元の濃度に戻すように脳が指令を出します。その際、摂った分の水を捨てようとするのですが、その時にはやはり電解質が一緒に出て行ってしまい、完全には元に戻りません」と語り、電解質を含む飲料を飲むことを勧めています。

 「十分な睡眠、水分、食事をしっかりとることが大切。まず、夏バテにならないような生活をする、これができていれば熱中症はかなり防げます」と村山さん。「喉が渇いたと感じる時には、脱水に片足を突っ込んでいる状態。飲んでも飲んでものどの渇きが止まらないというのは完全に脱水状態です。喉が渇く前に水分補給をするようにしましょう。高齢者はエアコン使ってくれないことも多いのですが、『我慢して、エアコンを使わない、水を飲まないでいると、心臓の負担が大きくなるよ、長生きできないよ』と、ここまで言って初めてエアコンを使ってくれたり、水を飲んでくれたりします。高齢者は皮膚の温度センサーが鈍くなっているので、部屋に温度計を置いてもらって30度になったらエアコンを入れる、27度になったら切る、というのをきっちりやってもらうことも大切です」とアドバイスを送りました。(QLife編集部)

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  • そうやってエアコンピッピするより、つけっぱなしのほうが電気代安いんだってよ。
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