表現力と演出力だけじゃダメ!クリエイターが売れるために必要な力

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2016年07月24日 18:02  新刊JP

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『ファーストクラスに乗る人の発想―今が楽しくなる57の具体例』(きずな出版)の著者中谷彰宏さん
出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!第83回のゲストは、実に1000冊目の著作『ファーストクラスに乗る人の発想―今が楽しくなる57の具体例』(きずな出版)を刊行した中谷彰宏さんです。

中谷さんといえば、スマートかつ鋭い言葉で読者を鼓舞する作家であるとともに、俳優やコメンテーターとしても活躍する才人。就職活動の時に『面接の達人』にお世話になった人は多いかもしれません。

なぜそんなに多才なのか?そしてなぜこれほどまで多作なのか?その才能の原点に迫るインタビューです。

■博報堂で学んだこと、今も役立っていること――中谷さんといえば、かつては博報堂でCMプランナーとして活躍していたことが知られています。当時手がけた有名なCMがありましたら教えてください。中谷:リクルートを担当していたので、リクルートのCMには携わりました。ただ、テレビCMってかかわる人が大勢いて、みんなに役割があるんですよ。「あのCMは俺が手掛けた」っていう人が100人いても、それはウソではないんです。

僕はラジオのCMもやっていたんだけど、こちらは録音技師さんと二人でできるから、「自分がした仕事」と言い切れます。だから僕はラジオCMのほうが好きでしたね。だけど、テレビと比べると地味だし、手間がかかる割には評価もされないし稼ぎにもならないから、他の人はしたがらないんです。それもあって、ラジオCMってほとんど制作を外注するような仕事だったんだけど、僕は外注しないで自分でやっていました。

――やはり、みんなテレビをやりたがる。中谷:特に車と化粧品はしたい人が多かったですね。そのぶん、大勢で作るので、自分がかかわれる部分はどうしても小さくなってしまう。

――博報堂で学んだことで、今も役立っていることはありますか?中谷:僕は演出だとか表現にかかわることがしたくて広告代理店に入ったのですが、たまたま直属の上司がマーケティングが好きな人で、マーケティングを徹底的に勉強させられました。当時は早く表現のほうをさせてくれないかなと思っていたけれど、後にすごく役立ちましたね。

売れっ子のクリエイターって、表現の分野に強いんだと思われがちなんですけど、みんなマーケティングもバリバリできます。作家でいえば五木寛之さんもそうですし、村上龍さんも渡辺淳一さんもそうです。マーケティング的な視点があるから世の中の空気を読める。そしてなおかつ表現ができる。ちょうど僕が博報堂を辞めるころに入ってきて入れ違いだった佐藤可士和さんもそうですよね。

あとはやはり、リクルートという元気のある会社を担当できたというのは幸運でした。広告代理店の社員は複数のクライアントを同時に担当するんですけど、担当したクライアントの正社員になっていくように感じるくらい中に入り込むんです。一番鍛えられて、一番楽しかったのがリクルートでした。リクルートは若いベンチャー企業で、博報堂は老舗です。その両方を体験できたのはラッキーでしたね。まあ、こういうクライアントでいい経験ができることもあれば、悲惨なクライアントの捕虜みたいになることも鍛えられました。

――32歳で退職するまで、ずっと会社の忘年会の幹事をやっていたとか。中谷:忘年会の幹事は新入社員の仕事だから、普通なら一回すればいいんだけども、僕は二年目の時に引き継ぎも兼ねて新人のアシストをして、なんだかんだそれ以降も毎年していました。

――みんながやりたがるテレビCMではなくてラジオCMが好きだったというお話もそうですが、人が行かない方向に行きますよね。中谷:そうですね。みんながしたがる仕事については「誰かがしてるから自分はいいや」という気持ちはありました。

それと、企業が大きくなって組織が固まってくると、みんながしたがらなかったり逃げてしまった結果、手つかずになった「隙間」が増えてくるんです。それがチャンスなんだと思っていました。

――車や化粧品のテレビCMなど、「花形」の方に行きたい気持ちはなかったんですか?中谷:したいと言ったからといってさせてくれるわけではないですからね。どんな仕事に当たるかというのは巡り合わせの部分が大きいです。それって会社の仕事に限ったことではなくて、今の自分にも言えます。今公開されている『少女椿』という映画に、嵐鯉治郎という少年愛の男の役で出ているんですけど、「なんであの役を引き受けたんですか?」とよく聞かれるんですよ。答えは簡単で「依頼が来たから」です。依頼が来た役を自分なりに思い切り楽しんで演じているのです。

仕事というのは選ぶものではなくて、自分のところに来たものを最大限楽しんですることが大事です。自分のところに来た仕事をもっと面白くするために、自分から企画を考えるという発想です。これも博報堂で学んだことですね。

――与えられた仕事に対して「こんなこと自分にできるんだろうか?」と不安になることはありますか?中谷:そんなことだらけです。というか、そうじゃないとダメですよ。得意なこととか、元々できることだけやっていると、人はしぼんでいきますから。

第三回 極秘ミッションにかかわったおかげでクライアントに“捕虜”に につづく

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