ホタテの貝殻由来成分が除菌剤に、生食用食品の殺菌消毒への応用に期待

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2016年08月03日 12:00  QLife(キューライフ)

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現行法上では加工助剤という用途に限定

画像はリリースより

 ホタテの貝殻を高温処理して得た焼成カルシウムを主成分とする新たな除菌剤を、京都大学東南アジア研究所、株式会社かわかみ、株式会社漬新が共同開発し、「キンコロスウォーター」として商品化しました。焼成カルシウムは、既に食品添加物として認可されていることから、食品への使用に関しても安全だと考えられており、今後は生食用の食肉や魚介類などの殺菌消毒へ応用が期待されます。

 現在、除菌剤の主流は、アルコール(エタノール)と次亜塩素酸ナトリウムですが、それぞれ弱点があります。アルコールは水で薄まると、殺菌効果が減少するため、水分の多い食材の殺菌には適していません。次亜塩素酸ナトリウムは有機物と触れると殺菌力が低下するほか、異臭が発生するため、飲食店などでは営業中に使いづらいという問題点があります。

 今回、開発された除菌剤には、これらの弱点は顕著に見られず、非加熱殺菌消毒が困難だとされている生食用の食肉や魚介類、ワックスのきいた果実などの殺菌消毒に使える可能性も考えられています。ただ、焼成カルシウムは現行の法律上では加工助剤という用途に限定されているため、食品に直接使用することはできません。

物理的処理と併用することで、殺菌効果をさらに強化

 キンコロスウォーターは、焼成カルシウム溶液に低濃度エタノールと乳酸ナトリウムを追加したもので、ノロウイルスなどの食中毒原因微生物に対して強い殺菌作用があることがわかりました。既に、食品製造業の現場で厨房器具や手袋などの除菌、トイレ周りのノロウイルス対策として使われています。

 研究グループでは、次のステップとして、キンコロスウォーターが生食用牛肉の殺菌に応用できるかを検討。生食の際に問題となる細菌の1つ、腸管出血性大腸菌(O157)は胃酸で殺菌されにくく、生きたまま大腸に到達するため、感染・増殖すると命にも関わります。実験では、O157の代表「EDL933菌株」の培養液を薄めた菌液に牛もも肉を10分ほど浸し、汚染状態に。この肉を、キンコロスウォーターで殺菌する際、高速洗浄と超音波処理を併用した結果、殺菌効果がかなり強まることが判明しました。

 さらに、途中で殺菌剤を新しいものへ入れ替えるステップを導入するなどの改善により、O157菌株が1菌体も検出されないレベルまで殺菌することにも成功しました。これまでの殺菌手法に比べ、生食用として取り出せる部分が多くなることが見込まれます。また、これまで殺菌手段が無いために食べることができなかった食材についても、この除菌剤を用いた殺菌手法の開発を進めていく予定です。(菊地 香織)

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