不倫が発覚した夫、開き直って愛人と同棲…強制的に「帰宅」させることは可能?

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2016年08月10日 10:42  弁護士ドットコム

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夫の不倫が発覚。離婚せず、夫婦関係を回復したいけど、どうすればいい? 弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、こんな相談が寄せられました。


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投稿者が不倫について夫を問いつめたところ、「離婚したい」と言われたそうです。投稿者が拒否すると、「それならば別居しよう」。夫は不倫がバレたことで開き直り、仕事を理由に外泊をするようになってしまったといいます。


そんな夫の態度を受け、投稿者は精神的に不安定になり、数日間友人宅へ身を寄せました。しかし、友人宅から自宅へ戻っても夫は帰ってこなかったといいます。「現在は不倫相手と同棲しているようです。約1週間になります」。


投稿者は、「この様な場合、同居義務違反で家に帰ってこさせることは可能でしょうか?」と質問しています。夫は、「法的根拠があるならば帰ってやるよ」と言っているそうです。不倫相手と同棲し、自宅に帰らない夫を、強制的に帰宅させることはできるのでしょうか? 菅野 朋子弁護士に聞きました。


● 強制的に夫を自宅に帰らせることはできない


民法では、夫婦の同居義務が明記されています(民法752条)。今回のケースを考えるにあたっては、そもそも、夫が同居義務に違反しているかどうかが問題となります。


夫婦関係が修復できないほど破たんしている状態で、一方が同居を拒否し、その意思を変える可能性がない場合などは、夫婦が同居していなくても同居義務違反とはなりません。


今回のケースではこの点が微妙なのですが、夫が「やっぱり同居する」と意思を変える可能性がないほどの状態に至っているのであれば、夫婦関係が破たんしているとして、そもそも同居義務違反にはなりません。


仮に同居義務違反になるとしても、「同居しなさい」と、裁判所が強制執行することはできませんので、強制的に夫を自宅に帰らせることはできません。


なお、配偶者が家を出て行ってしまったが婚姻生活をやり直したい、という場合には、円満調停を申し立てられます。これは、夫婦関係を円満にやり直すために、夫婦が話し合うことを目的とした、家庭裁判所における調停です。


もっとも、調停はあくまでも当事者同士の合意で成立するものであるところ、円満調停を行う場合は、すでに別居をしていて婚姻関係がこじれてしまっているケースがほとんどです。したがって、同居して円満にやり直しましょう、という合意に至ることはなかなか難しいです。


仮に夫が同意したとしても、先ほど説明した通り、強制執行はできません。もし、「一緒に住むと同意したのに別居が続いている」など、同意した通りにならなくても、なすすべがないということになります。


円満調停は、極めて有効な手段というわけではありませんが、お互いに夫婦関係を見直すきっかけにはなります。申立をしてみるというのも一つの手段だと思います。




【取材協力弁護士】
菅野 朋子(かんの・ともこ)弁護士
2009年9月弁護士登録。企業内弁護士、法律事務所勤務を経て2011年に独立。離婚・相続を数多く扱う。「モーニングショー」「ニュースリーダー」コメンテーターなどメディア出演や講演も多数。高校生の母。

事務所名:渋谷リヒト法律事務所
事務所URL:http://sbyl.jp/


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