出光興産の経営統合問題が「泥沼」、創業家が打ち出した「奇策」にどんな意味がある?

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2016年08月22日 09:51  弁護士ドットコム

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石油元売り大手「出光興産」と「昭和シェル石油」の経営統合問題で、統合に反対する出光興産の創業家が、合併を阻止するために、昭和シェル石油の株式を取得する「奇策」に出た。8月3日に創業家側が記者会見を開いて明らかにした。


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報道によると、両社の現在の計画では、出光興産が昭和シェル石油の株式を市場を通さず英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから33.2%取得する計画だったが、創業家の出光昭介氏が昭和シェル石油の株式の0.1%にあたる40万株を取得。法律上、この0.1%が出光の取得分に合算され、33.3%になるため、TOB(株式公開買い付け)を行う義務が発生して、時間と費用がかさむ状態になってしまうそうだ。


このような事態を受けて、昭和シェル石油の坂田貴志執行役員は8月10日、TOBによる合併の可能性について、「強い会社を作る目的を達成できない」と合併計画の変更に強い懸念を示しているという。


今回の「奇策」の背景にはどのような法的な仕組みがあるのだろうか。また、株式取得は一連の騒動の中で、どのような意味があるのだろうか。鎌田智弁護士に聞いた。


●なぜTOBを実施せざるをえなくなるのか


「金融商品取引法は、60日間で著しく少数の者から相対で(取引所金融商品市場の外で)株式を取得し、その結果株式の所有割合が3分の1を超えることになる場合は、TOB(株式公開買い付け)によらなければならないとしています。


3分の1を超える株券を保有していると、特別決議を阻止することができます。いわゆる拒否権を持つことになります。支配権に移動が生じるため、すべての投資家に公平に情報開示と株式を処分する機会を与えるために、TOBが実施されるのです」


今回の場合は、創業家と会社の株式が合算して考えられているようだが、なぜなのか。


「複数の者が共同して株券の買付けを行う場合があることを考慮するため、TOBの判断については、買付者の株券所有割合に買付者の特別関係者の株券所有割を合算して算定することとされています。


出光興産がTOBを実施しなければならないとすると、巨額の買収資金が必要になり、財務体質がさらに弱体化する懸念があります。昭和シェル石油を子会社化することにつながり、対等な経営統合の理念に反することにもなります。


出光興産は、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル石油の33.2パーセントの株式を相対取引で買取り、経営統合の具体的な協議に入る計画だったとされています。


今回の出光興産の創業家側による昭和シェル石油の株式取得は、出光興産が昭和シェル石油の株式を取得することを阻止し、経営統合の計画を見直さざるをえなくさせようとするものです」


鎌田弁護士はこのように話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
鎌田 智(かまた・さとる)弁護士
上場企業の法務部長を務めた後、現在の事務所を開設。
企業内弁護士の経験を生かし、中小企業のビジネス法務に取り組む。
事務所名:鎌田法律事務所
事務所URL:http://www.kamata-law.jp


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